非鉄金属資源の有効活用

循環型社会への貢献(資源の有効活用)

低品位ニッケル酸化鉱の資源化

写真:タガニートHPAL向け低品位ニッケル酸化鉱

タガニートHPAL向け低品位ニッケル酸化鉱

地表に近いところに存在するニッケル含有率の低い酸化鉱を原料とした製錬は、技術的な課題も多く商業ベースでの実現が困難でした。しかしながら、こうした低品位酸化鉱は世界のニッケル酸化鉱資源量の約7割を占めるといわれ、その処理を可能にする技術開発が世界的に求められていました。当社グループはフィリピンのコーラルベイニッケル社※1において、設備エンジニアリングや操業面での高い技術を背景に、HPAL法という湿式製錬技術による大規模商業化生産を2005年4月、世界に先駆けて実現しました。
また、2013年からはHPALによる第2プラントとしてタガニートHPAL社※2が操業を開始しています。このHPALプラント2拠点で製錬されたニッケル中間原料は、日本国内で電気ニッケルや電気自動車等向けの車載用二次電池正極材料として利用されています。また、この中間原料に含まれるコバルトおよび鉱石中に含まれるスカンジウムとクロマイトを回収し、資源化しています。

  • ※1コーラルベイニッケル社:株主および出資比率は、住友金属鉱山(株)84.375%、ニッケル・アジア・コーポレーション15.625%。本社はフィリピン共和国パラワン州バタラサ郡リオツバ
  • ※2タガニートHPALニッケル社:株主および出資比率は、住友金属鉱山(株)75%、三井物産(株)15%、ニッケル・アジア・コーポレーション10%。本社はフィリピン共和国スリガオデルノルテ州タガニート地区
■ ニッケルの安定供給を実現するサプライチェーン
図:ニッケルの安定供給を実現するサプライチェーン

電池リサイクル

急速かつ長期的な進展が見込まれている自動車の電動化と電池の高容量化に伴い、電動車に搭載されるリチウムイオン二次電池(Lithium Ion Battery: LIB)に用いられる銅、ニッケル、コバルト、リチウムの需要は拡大し、リサイクルによる資源循環が求められています。
当社は、LIBに含有される銅およびニッケルについて、東予工場の銅製錬工程とニッケル工場のニッケル製錬工程を組み合わせたプロセスによる再資源化を2017年から行っています。特に、回収されたニッケルは磯浦工場で二次電池の正極材に加工され、日本で初めて使用済みLIBからの“Battery to Battery”の水平リサイクルを実現しています。
これに加え、当社ではLIBリサイクルの研究開発を進め、資源枯渇が懸念されるコバルトについても回収・高純度化して正極材の原料として再利用できることを2021年に実証しました。さらにリチウムについても、当社と関東電化工業(株)との共同開発により、乾式スラグから高純度リチウム化合物として再資源化する技術を2022年に確立し、銅、ニッケル、コバルト、リチウムを水平リサイクルする新プロセス開発に成功しました。
なお、本プロセスを通じて製造されたLIB用正極材を活用した電池については、ユーザーであるプライムアースEVエナジー(株)での電池性能評価において、天然資源由来中心の既存原料から製造したものと同等であることが製品レベルで実証されています。
現在は電池リサイクルの事業化に向けた検討を進めており、24中計期間(2025~2027年度)に1万トン/ 年の処理体制確立を目指しています。並行して、カーボンニュートラルの観点からCO2排出量削減のための技術開発にも取り組んでいます。この新プロセスで有価金属の再資源化が商業ベースで可能となれば、世界的な資源枯渇に対応する資源循環に一層の貢献が期待できます。
今後も当社は“Battery to Battery”の水平リサイクルに積極的に取り組み、持続可能な循環型社会の形成と世界的な資源枯渇に対応する資源循環の推進強化に貢献していきます。

■ 再資源化の流れ
図:再資源化の流れ

その他のリサイクルの取り組み

リサイクル由来の原料比率

当社グループでは、銅系、貴金属系のスクラップ類を市中から調達しているほか、鉄鋼電炉ダストから亜鉛の回収も行っており、また使用済みプリント基板などから有価金属や貴金属を回収しています。2022年度のリサイクル由来の原料投入量は約236千トンで、原料投入量に占める比率が2.21%(2021年度2.38%)となり、前年度より微減となりました。また、リサイクル原料からの電気銅の生産量は約93千トンで、生産量に占める比率が20.9%(2021年度23.1%)となり、前年度より微減となりました。

■ リサイクル由来の原料比率
図:リサイクル由来の原料比率

リサイクル由来の原料比率:使用総原料÷リサイクル原料×100

リサイクル原料としてのスラグ

電気銅を製造する東予工場では、その製錬過程から銅スラグを副産物として産出しています。その主な用途は、全体の7割が国内外のセメント向けです。銅スラグ中には約40%の鉄が含まれ、セメントの鉄源として広く有効利用されています。
ステンレスの原料となるフェロニッケルを製造する(株)日向製錬所でのフェロニッケルスラグの主な用途は鉄鋼高炉向けなどです。フェロニッケルスラグ中には約30%のマグネシアが含まれ、マグネシア源として高炉のフラックス(熔剤)に利用されています。

図:リサイクル原料としてのスラグ

貴金属回収フロー

全国各地から集荷した廃家電、廃電子部品、およびそれらの製造工程で発生した金・銀・銅・パラジウムなどの有価金属を高濃度に含有する金銀さい(E-スクラップ)などを原料として、貴金属(金、銀、白金など)の回収・再生を行っています。
集荷された原料は、関係会社(大口電子(株))で貴金属を含む部分と含まない部分に分別のうえ、組成などに応じて乾式または湿式プロセスで濃縮を行い、東予工場に輸送します。
東予工場ではこの濃縮原料を他の銅・貴金属原料と同時に製錬・精製し、高品位の貴金属に再生しています。

図:貴金属回収フロー