労働安全衛生
GRI 3-3
当社グループの事業活動では高所での作業や大型の設備・重機・化学物質の取り扱いを行うため、従業員が死亡災害を含む労働災害や健康被害に見舞われる可能性があります。
一方で、安全で安心して働ける環境は、従業員と会社の信頼関係向上や従業員のモチベーションにつながる経営の重要な要素の一つです。そこで、当社グループは協力会社も含めて快適で安全な職場を形成することを目指して、設備本質安全化対策をさらに進化させて、IoT※やAI(人工知能)など先端技術導入も開始しています。
- IoT:あらゆるものがインターネットにつながり、サービスが展開されること
労働安全衛生方針・目標と結果、アクションプラン
GRI 3-3
労働安全方針
重篤災害の撲滅に向けて
- 設備の本質安全化を意識した改善の推進
- 安全管理力のレベルアップ
- 安全行動がとれる人づくり
■ 労働安全目標と実績
| 2024年実績 | 2025年目標 | |||
|---|---|---|---|---|
| 1. 労働災害 | 重篤災害 (休業3か月以上) |
全災害 | 重篤災害 (休業50日以上) |
休業4日以上の災害(腰痛、熱中症除く) |
| 1)国内グループ社員 | 2件 目標:0件 |
22件 目標:7件以下 |
0件 | 2件以下 |
| 2)国内協力会社 | 0件 目標:0件 |
7件 目標:2件以下 |
0件 | 1件以下 |
| 3)海外事業場社員 | 0件 目標:0件 |
0件 目標:1件以下 |
0件 | 0件 |
| 2. 交通事故 | ||||
| 加害人身事故 | 8件 目標:6件以下 |
6件以下 | ||
2024年の取り組み結果
2024年の国内グループ社員災害は目標を超えて、全災害22件、うち重篤災害(休業3か月以上)が2件発生しました。全災害のうち9件が休業災害であり、かつ内7件の罹災者は作業経験年数5年未満で、重篤災害(休業3か月以上)2件の罹災者は作業経験2年未満でした。国内の協力会社の全災害件数も目標を超えて7件発生しました。一方、海外事業場では無災害を達成し、全災害件数目標を達成しました。
災害発生の背景要因としては
- リスクの高い設備の本質安全化など設備改善の遅れ
- 管理監督者の作業実態の認知不足による危険な作業の放置
- 作業者のヒューマンエラーによる基本安全行動・ルールの不徹底が見られました。
2024年の施策として、重篤災害に繋がる自動運転設備への応急安全対策の徹底と恒久対策促進など本質安全化設備投資・改善を促進しました。また、管理監督者の現場管理力の向上を目的として2023年に実施した管理職位者への安全管理者選任時研修のフォローアップを実施すると共に、従業員の危険感受性を更に高めるためのVR機器を用いた体感訓練を実施しました。また、安全巡視などを通じて各職場に手順の充実や教育などルール順守をはじめ安全確保につながる行動の実施を指導しました。
2025年の労働安全計画
2024年の重篤災害を含む災害多発に歯止めをかけるべく、これまでの設備改善などの取り組みをより一層強化するとともに、安全管理力の強化を図ります。また重篤災害の未然防止を強く意識するため目標を以下のよう変更し、この目標を達成するため安全活動を進めていきます。
重篤災害:休業日数を従来の3か月(2021年にマイルストーンとして設定)から50日以上へ変更
休業4日以上の災害:従来の全災害の件数から労働基準監督署への災害報告が必要となる休業4日以上の災害の件数へ変更(但し腰痛・熱中症除く)
2025年アクションプラン(重点方策)
- 設備の本質安全化と協業型設備の導入などの設備改善の進展と職場環境の整備
① 自動運転機械総点検の残件対策と設備の本質安全化推進
② 重機災害の安全対策
③ 協業型設備導入によるリスク低減・解消
④ エイジフレンドリーな職場への転換(3S含む) - 安全管理力(体制・能力・設備)のレベルアップ
① 管理監督者・安全衛生スタッフの力量の向上・実践
② 作業観察や実践的RAなど3現による類似災害の防止
③ 管理(監視)支援機器の活用 - 安全行動がとれる人づくり
① 危険体感教育の効果的な活用
② 安全道場教育内容展開による不安全行動の撲滅
③ 安全体力機能の維持改善
労働衛生方針
作業環境改善・疾病予防対策による快適な職場環境の確保
■ 労働衛生目標と実績
| 区分 | 2024年実績 | 2025年目標 |
|---|---|---|
| 1. 粉じん・鉛・特化物 | ||
| 1)第3管理区分作業場数 | 0 目標:0 |
4以下 |
| 2)第2管理区分作業場数 | 削減(2023年:7→2024年:2) 目標:削減 |
|
| 2. 騒音作業場 | ||
| 第3管理区分作業場数のうち、作業負荷値1以上の作業場数 | 3 目標:1以下 |
1以下 |
| 3. 業務上疾病者 | ||
| 疾病者(要治療者)数 | 0 目標:0 |
0 |
2024年の取り組み結果
2024年は第3管理区分作業場数と業務上疾病者の発生はゼロを達成するとともに、第2管理区分作業場数も前年から削減し目標を達成しました。
2024年の施策として第3管理区分作業場数ゼロを目標とした設備改善と、第2管理区分作業場数ゼロを目指した計画的な作業環境の改善を進めました。当該作業場の集中している別子地区を中心に事業部門の安全衛生担当者と安全環境部員が巡視を実施し、事業場の作業環境改善および維持管理について指導や進捗のフォローを行いました。引き続き設備の改善と管理面の強化に取り組み、最終的には第3、第2管理区分作業場数ともゼロを目標として業務上疾病リスクのない快適職場を目指します。
また、2022年5月の労働安全衛生法の一部改正(2024年4月1日全面施行)によって、化学物質の管理が個別規制から自律的管理へと大きく転換されたことから、当社グループ事業場においても自らリスクアセスメントを行い、ばく露の防止や低減などの自主的な取り組みを進めました。
2025年の労働衛生計画
2025年は、改善が必要な作業場が集中している別子地区の安全環境センターおよび事業部門の安全衛生担当者とより強く連携し、巡視等や改善技術の共有化を通じて作業環境の改善および維持管理を強化し、快適な作業環境を実現していきます。
2025年アクションプラン
- 作業環境の計画どおりの改善とその後の維持
① 改善投資計画の進捗確認
② 作業場要員のレベルアップ
③ 関係部門連携による管理強化・指導
④ 騒音個人暴露時間の短縮 - 新しい化学物質規制への対応状況の確認とリスクアセスメント手法適用による確実な法規制の順守
① セルフチェックリストによる再確認と部門・安全環境部による現地でのチェック内容の確認
② リスクアセスメント手法の改善
労働安全衛生のリスクアセスメントおよび対策
リスクアセスメント
GRI 403-2
当社グループでは、化学物質、作業またはその組み合わせによって災害や健康影響が生じるおそれがある危険源に対してリスクアセスメント(危険性または有害性の調査)を積極的に活用して危険性を評価し、適切な対策を行っています。またリスクアセスメントや作業環境改善の状況について、安全衛生委員会にて報告を行い、評価し、従業員へ周知するなど、安全衛生レベルの向上に努めています。
巡視、パトロール
事業場を所管する部門は、部門の長が、所管する関係会社を含む事業場を毎年巡視し、安全衛生管理が適切に行われているかを確認しています(2024年は国内外45事業場で105回実施)。また、安全環境部長またはその指定者が、各事業場に対する保安・安全・労働衛生管理に関する巡視を行い、その結果を社長、事業場を所管する部門長並びに事業場の総括者に報告します(2024年は国内の安全統計対象47事業場のうち25事業場で25回実施)。さらに、重大な事故または災害が発生した場合は、ただちに現地での調査を行っています(2024年は13事業場で17回実施)。
各事業場では事業場総括者による安全パトロールや、各職場での作業観察パトロール、小集団による安全活動も実施し、一部の事業場では外部講師による指導も受けて、現場の危険個所の確認・改善を行っています。
労働安全衛生教育の実施
GRI 403-5
■ 労働安全衛生に関する教育研修
| 法定教育 | 雇入れ時、特別教育、危険・有害業務従事時等の教育を実施しています。 |
|---|---|
| 法定を上回る教育 | 法定の教育に加え、次のような教育を実施しています。
|
体験型研修施設における教育
GRI 403-5
当社グループでは、2010年から愛媛県新居浜市に体験型研修施設(王子館)を設け運用を行っています。王子館は、「危険体感ゾーン」と「設備技能養成ゾーン」で構成されています。「危険体感ゾーン」では、作業者自らが日常作業に潜む危険の疑似体験を通じて、労働安全や労働衛生に対する感受性を高めること、一方の「設備技能養成ゾーン」では、現場の実機やカットモデル等に作業者が実際に触れ操作することによって、設備や装置に強いオペレーターを育てることを目的としています。2つのゾーンでは館長および専任講師陣に加え、現場の管理・監督者、ベテラン社員から成る任命講師陣により教育が行われています。2013年から王子館員が事業場に出張して行う出張危険体感講習も実施しており、受講者の拡大を図っています。また、事業場単位で王子館の施設を利用し、自職場のリスク評価に基づいた独自のプログラムによる安全教育を展開しています。
また、2023年9月からフィリピンのコーラルベイニッケル(CBNC)で王子館を参考にしたSafetySkills and Training Center(SSTC)で危険体感訓練を開講、フィリピン人従業員および協力会社社員を中心に2024年末までに延べ590名の受講を完了しています。
王子館利用および出張講座の受講者数(2024年末)
| 王子館利用者 | 23,100人 | |
| 内訳 | 国内グループ | 18,479人 |
| 協力会社 | 4,502人 | |
| 海外拠点 | 119人 | |
| 出張講座受講者 | 11,053人 | |
| 合計 | 34,153人 | |
外部とのコミュニケーションなど
当社では日本鉱業協会や協豊会※の安全衛生委員会などに参加し、法改正情報や対応手法の入手、工場相互訪問による良好事例の展開などにより、最新の安全衛生技術の導入や安全衛生レベルの向上を図っています。
- 協豊会:トヨタ自動車(株)の協力企業200社以上で構成されている
保安・安全・労働衛生管理・環境保全に係る功績表彰
保安・安全・労働衛生管理・環境保全に著しい功績があり、他の模範となると認められる個人または職場に対して、賞状・副賞をもって年1回表彰しています。
2024年度表彰実績
- 優良社員
住鉱資源開発(株):41名、播磨事業所:51名 - 長時間無災害
播磨事業所、住鉱技術サービス(株)、住鉱潤滑剤(株)三重事業所、新居浜電子(株)、(株)グラノプト