サステナビリティ

トップメッセージ

源流事業から受け継ぐ「ソーシャルライセンス」への意識

当社グループは、長期ビジョンとして「世界の非鉄リーダー」を掲げています。この実現に向けては、事業を通じて社会課題に積極的に取り組んでいる姿を重要な要素の一つとしています。これは、住友の事業精神とともに伝わる「自利利他公私一如」(住友の事業は、住友自身を利するとともに、国家を利し、かつ社会を利するものでなければならない)の精神が示す「公益との調和」の希求に通ずるものです。
当社は、住友の業祖である蘇我理右衛門が1590年に興した銅製錬事業、また住友グループ発展の礎である別子銅山(愛媛県新居浜市)をはじめとする鉱山経営という源流事業を受け継いでおり、この事業理念をしっかりと当社グループの企業行動の中心に据えて事業を行うことが重要であると認識しています。
一方、資源産業は大規模開発を伴うことが多いため地域社会や環境などへ及ぼす影響も大きくなります。環境などへのマイナスの影響を極力抑え、雇用や納税、地域産業振興などの貢献を通じて、ソーシャルライセンス(社会的操業許可)を得ることが資源開発の大前提と考えています。
1691年から283年間にわたる別子銅山経営において、住友は住居や学校、病院などをはじめとするインフラの整備などを通じて最盛期には約12,000人もの従業員やその家族の山中での生活を支えたほか、年間最大200万本を超える大規模植林事業や銅製錬所で発生する亜硫酸ガスの排出ゼロを世界に先駆けて達成するなど、古くより地域社会や地球環境との共存共栄を図ってきました。当社グループでは、グローバルでの資源開発を進める現代においてもこの理念を継承し、ソーシャルライセンスの獲得、様々なステークホルダーとの信頼関係の構築に努めています。

社会課題の解決に向けて当社グループが果たす役割

現在、地政学的リスクの高まり、世界の分断や二極化の加速などにより、世界はより複雑化した社会課題に直面しています。同時に、企業活動においてもサプライチェーンの混乱、エネルギーをはじめとした調達コストの上昇、経済安全保障に係る課題の顕在化など、不確実性が高まっています。こうした環境下においても、当社グループが社会に対して果たすべき役割や貢献できる分野は多岐にわたると考えています。
例えば、当社グループが生産する銅やニッケル、コバルトといった非鉄金属は、再生可能エネルギー関連設備やEV車などの気候変動対策につながる多くの分野においてますます需要が増えることが予想されます。こうした様々な活動の基盤となる資源を安定的に社会に供給することは当社グループの使命だと考えます。一方で、多くの非鉄金属資源において優良な鉱山は減少の一途をたどっていることなどから、既に市中にある金属資源の効率的な回収と再利用の重要性も高まっています。当社グループでは製錬、材料事業で培った技術を活かし、高効率な資源循環を実現する廃バッテリーからの二次電池正極材へのリサイクルにも積極的に取り組んでいます。
当社グループでは2030年のありたい姿において、重点的に推進する11項目の重点課題、KPIを定めており、持続可能な社会実現に向けた取り組みを進めています。

経営とサステナビリティの取り組みの一体化を推進

2022年度は、経営とサステナビリティ実現に向けた取り組みをより一体のものとして進めるために当社グループのサステナビリティ推進体制を刷新し、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)等の喫緊の課題への対応も併せて強化しました。また、世界的に要請が高い人権に関する取り組みを国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って進めました。まず、人権方針について様々な国際行動規範等における要請事項を改めて整理、社外の専門家のご意見も踏まえたうえで「住友金属鉱山グループ人権方針」の大幅な見直しを行いました。人権デュー・ディリジェンスに関しては、新たにニッケルに関して運用体制の整備と第三者認証を進めました。苦情処理メカニズムの整備では、ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)の活用により、その充実と正当性の担保を図りました。
さらに2023年度は、人権問題とも深く関連し世界的な社会課題である水利用に関して、当社グループの取り組み姿勢を「住友金属鉱山グループ水に関する方針」として新たに制定しました。今後は、この方針に基づき水資源の持続可能な利用および管理に努めます。
人材面での取り組みとしては、自ら変わること・変えていくことを恐れない組織・人づくりを推進するため、総合職人事制度を抜本的に見直しました。今後は、新制度の適切かつ効果的な運用を通じ、社員一人ひとりが自律的に学び続け、挑戦・変革・成長のできる組織を目指します。

当社グループが掲げる長期ビジョン「世界の非鉄リーダー」や2030年のありたい姿実現のためには、ステークホルダーの皆様から信頼をいただくことが必要です。このことから、当社グループの取り組みや活動をより広くご理解いただくことを目的として、本年よりサステナビリティレポートを発行しました。今後とも、多様なステークホルダーの皆様との継続的な対話を重ね持続可能な社会の実現に向けた責任を果たしてまいります。

代表取締役社長
野崎 明