経営方針・戦略

コーポレートガバナンス

基本的な考え方・体制

当社は、コーポレートガバナンスを、当社グループの企業価値の最大化と健全性の確保を両立させるために企業活動を規律する仕組みであり、経営上最も重要な課題の一つと位置付けています。
当社は、「住友の事業精神」を基本とした「SMMグループ経営理念」を定めており、コーポレートガバナンスの充実に努めることにより、「SMMグループ経営理念」の達成に向けて効率的かつ健全な企業活動を行い、社会への貢献と株主をはじめとするステークホルダーへの責任を果たしていきます。

コーポレートガバナンスに関する基本方針の策定

当社は、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方や、ステークホルダーとの関係、ガバナンスの体制などコーポレートガバナンスの枠組みをまとめた「コーポレートガバナンスに関する基本方針」を策定しています。

コーポレートガバナンス体制

当社のコーポレートガバナンスに関する基本的な考え方や枠組みをまとめた「コーポレートガバナンスに関する基本方針」のとおり、当社のガバナンスは、業務執行とこれに対する監視・監督のそれぞれの機能が十分に発揮されるシステムとして、監査役会設置会社および執行役員制度を採用し、取締役会による「意思決定・監督」、社長および執行役員による「業務執行」、そして監査役および会計監査人による「監査」という3区分の組織体制により運営されています。

図:コーポレート・ガバナンス体制

ガバナンス強化への取り組み

当社では、コーポレートガバナンスを経営上最も重要な課題の一つと位置付け、その強化に取り組んでいます。今後も、当社は、より良いコーポレートガバナンスを実現するため、法令改正や社会情勢などを踏まえ、常に現在の状況を見直し、改善・深化を図っていきます。

当社のガバナンスの変遷

図:ガバナンスの変遷
  • 取締役会・監査役会の「員数」は、株主総会後の人数

取締役会のあるべき姿

当社は、資源・製錬・材料の3事業をコアビジネスと位置付け、長期ビジョン「世界の非鉄リーダー」を目指しています。これらの事業はいずれも非鉄金属に関わる事業であり相互に有機的な関連を持ち、多様な経営課題に対して取締役会が自ら意思決定を行える事業内容と規模であると考えています。また、現在強化を図っている3事業間の連携という面でも、各事業に強い独立性を与えて独自の意思決定を認めるよりも、取締役会自らが総合的に意思決定を行うことが会社の成長をより促すことにつながると考えています。そのため、執行全体を事後的に監督するモニタリング・モデルではなく、マネジメント・モデルを原則として採ることが当社のガバナンスとして適していると考えています。
また、当社グループの事業の特性上、経営基盤(特にコンプライアンス、安全、環境)の強化が重要であり、監査役が取締役や執行役員などに対して忌憚なく課題を指摘できる体制を整えておく必要があると考えます。この点から、独任制という権限の保障された監査役が、4年間にわたり安定して監査機能を発揮することが期待できる監査役会設置会社の機関設計を採用しています。なお、監査役には取締役会の決定事項に関する招集権および取締役会の議決権がなく、その結果として取締役の解任提案を取締役会に対してすることができないことが監査役会設置会社の課題であると認識しています。この課題に対しては、複数(3分の1以上)の社外取締役を設置し、ガバナンス委員会委員に就任いただき、ガバナンス委員会において取締役および執行役員等の選解任を取り扱うことにより課題を乗り越えるべく取り組んでいます。

意思決定・監督体制

取締役・取締役会

取締役8名(社外3名)

議長:中里佳明(代表権のない取締役会長)
任期:1年
2022年度開催実績:17回

取締役会は、当社事業の各分野に精通した当社出身者に加え、社内出身者とは異なる知識、経験、能力、見識等を有し、株主をはじめとするステークホルダーに代わって経営陣を監督することのできる社外有識者を招聘することにより、多様性を持った構成としています。
さらに、より透明性の高い経営を目指し、取締役のうち3分の1以上を独立した社外取締役とする方針としており、取締役8名のうち、経営者としての経験を持つ者を含む3名を独立した社外取締役として選任しています。
当社の取締役のうち、執行役員を兼ねる取締役は4名となっております。利益相反については日本法に基づいて対応しています。支配株主は存在していません。

取締役会における主な議題

  • 各事業の既存・新規プロジェクト関連
  • 借入等の資金調達
  • 人権やDX等に関する方針を含む重要規程等の制定・改定
  • 政策保有株式の保有状況
  • 機関投資家との対話内容
  • 監査役監査や内部監査の計画・結果

他にサステナビリティ活動の進捗状況報告を年2回以上実施しています。また、内部通報制度の利用状況や対応状況についても定期的に報告されています。なお、苦情処理(救済)メカニズムとして、サプライヤー等外部から苦情を受け付ける窓口「ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)」に寄せられた苦情についても報告対象としています。
重大な懸念事項が発生した場合は取締役会に報告することとしていますが、2022年度に報告された重大な懸念のある事項はありませんでした。
取締役会が行うステークホルダー・エンゲージメントでは、顧客・取引先は事業部門、従業員は人事部、株主・投資家は広報IR 部に権限を委譲して実施しています。
なお、投資家との対話状況については年1回報告しています。

ガバナンス委員会

ガバナンス委員会委員4名(社外3名)

委員長:石井妙子(社外取締役)
2022年度開催実績:5回(指名2回、報酬2回、ガバナンス全般1回)

執行役員でない取締役会長1名および独立社外取締役3名で構成され、取締役、執行役員等の指名や報酬の決定などのコーポレートガバナンス上の重要事項について、社長に対して客観的な立場から助言を行うことを目的として設置しています。

社外取締役の役割・機能

社外取締役には、アドバイザリー機能とモニタリング機能の2つを期待しています。
アドバイザリー機能に関しては、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、自らの経験等を背景に当社の従来の考え方や枠組みにとらわれることなく助言および判断いただき、取締役会の意思決定の質が高まることを期待しています。
モニタリング機能に関しては、独立した客観的な立場から、取締役会を通じて経営に対するチェック機能を発揮していただくとともに、ガバナンス委員会の委員として、取締役の指名や報酬等の意思決定に際し助言を行うことを通じて株主をはじめとするステークホルダーに代わって経営陣を監督していただきたいと考えています。

監査体制

監査役・監査役会

監査役4名(社外2名)

議長:今井浩二(常任監査役)
2022年度開催実績:18回

監査役は4名(常勤の監査役2名および社外監査役2名)で構成されています。当社出身の常勤の監査役は社内の情報を的確かつタイムリーに収集し、これに基づき的確な監査を実施する一方で、社外監査役は様々な専門分野や多角的な視点を活かした監査を実施しています。
各監査役は、経営の健全性の確保および当社の企業価値の向上を図るため、監査役会が定めた監査の方針、監査計画等に従い、取締役会その他重要な会議に出席し、取締役、執行役員および使用人等からその職務の執行状況について報告を受けるほか、 国内外の各拠点への往査活動を通じて、業務執行状況や固有の課題、内部統制システムの整備・運用状況を確認しています。また、常勤の監査役が重要な決裁書類等閲覧や関係部門からの報告等を通じて収集した情報は社外監査役と共有し、監査役間で協議しています。

監査役会における主な議題

  • 監査役監査計画(月次、年度)
  • 監査役監査実績(月次、年度)
  • 取締役会各議題内容確認
  • 事業環境情報
  • 監査役会監査報告書
  • 監査役会実効性分析評価結果

社外監査役の役割・機能

社外監査役には、経営の健全性の確保および中長期的な企業価値の向上を図るため、常勤の監査役と十分な連携を行いながら、自らの財務・会計・法務をはじめとする専門分野の知見、経験等に基づき、実効的な監査を行っていただくことを期待しています。
また、監査の一環として取締役会をはじめとする重要な会議に参加し、意思決定の過程において、独立した客観的な立場から、提案内容の適法性のみならず、妥当性を含め、積極的に忌憚のない意見を述べていただくことを期待しています。

内部監査部門、会計監査人と監査役の連携

内部監査部門である監査部は、当社グループ全体を対象として業務執行の監査を定期的に行っています。
監査部は、監査役および監査役会に対しては監査計画の説明をはじめ、適宜情報を提供しています。一方、監査役も、監査役会で決定した監査計画を監査部に提供し、監査部の監査に立ち会うことがあるほか、執行役員や部門長に対する内部監査結果の報告会に同席しており、2022年度は19回出席しました。会計監査人は現在、有限責任あずさ監査法人が務めており、独立監査人として会計監査および内部統制監査を実施しています。会計監査人と監査役の間でも、監査役が監査計画を会計監査人に提供し、会計監査人から監査計画の説明、四半期レビュー報告および監査結果の報告を受けるなど、連携を図っています。

独立性の基準

当社は、社外取締役および社外監査役全員を株主と利益相反の生じるおそれのない独立役員として届け出ています。
なお、当社が定める独立性基準については、以下のリンクをご参照ください。

社外取締役・監査役連絡会

2022年度は、5月と12月に開催し、内部監査部門からの直近の内部監査結果の概要報告や、監査役から監査役往査・部門長ヒアリング結果の概要等の情報提供、その他広く意見交換を実施しました。

取締役候補者の指名および経営陣幹部の選解任の手続、監査役候補者の指名の手続

取締役候補者の指名にあたっては、社長が、現在および今後の経営が向き合うべき課題(当社が持続可能な発展をするうえで経済、環境、ならびに人権を含む、人々にプラスまたはマイナスのインパクトなど)を解決するための最善の布陣について、候補者の知識、経験、能力、見識等を総合的に勘案し、執行役員でない取締役会長および株主をはじめとするステークホルダーに代わって経営陣を監督する独立社外取締役で構成するガバナンス委員会において助言を得たうえで、適任者を取締役会に提案します。取締役会は、提案を受け審議し、候補者を決定します。
執行役員候補者の選定にあたっては、社長が、各執行役員からの推薦を踏まえ、取締役候補者指名時と同様の考え方にしたがって候補者の知識、経験、能力、見識等を総合的に勘案し、同様の手続きを経て決定します。
なお、ガバナンス委員会において、次期社長を育成する環境や方法、候補者等について審議する機会を設けます。また、執行役員に不正・不当または背信的な行為があった場合など、著しく適格性に欠ける場合には、ガバナンス委員会において助言を得たうえで、取締役会の決議により解任できることとしています。
監査役候補者の指名にあたっては、社長が候補者の資質、財務・会計・法務に関する知識を含む知識、経験、能力、見識等について総合的に勘案し、監査役会の事前の承認を得たうえで、適任者を取締役会に提案し、取締役会において決定する方針とします。

最高経営責任者等の後継者計画の取締役会の関与

最高経営責任者(取締役社長)の後継者計画いわゆるサクセッションプランは、経営理念や経営計画を踏まえて適切に策定し、実施されています。社長の後継者候補に関しては、執行役員でない取締役会長1名、独立社外取締役3名で構成するガバナンス委員会(委員長:取締役 石井妙子)において、次期社長を育成する環境や方法、候補者等について審議する機会を設けています。
具体的な社長の後継者の選定にあたっては、社長の推薦する候補者をガバナンス委員会に諮り、候補者が取締役社長に相応しい資質、知識、経験、能力、見識等を有するか助言を得たうえで、社長が最終案を取締役会に提案し、取締役会において審議のうえ最終決定しています。
また、将来的な社長候補者のプールとなる執行役員候補者の選定にあたっては、社長が、各執行役員からの推薦を踏まえ、経営が向き合う課題解決のための最善の布陣について、ガバナンス委員会に諮り、その助言を参考に最終案を作成し取締役会に提案しています。これを受け、取締役会において審議のうえ最終決定しています。

取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性および規模に関する考え方

取締役会は、当社事業の各分野に精通した当社出身者に加え、社内出身者とは異なる知識、経験、能力、見識等を有する社外有識者を招聘することにより、多様性を持った構成とします。「現状のコーポレート・ガバナンス体制を選択している理由」に記載している「取締役会のあるべき姿」を踏まえ、取締役および監査役のスキル・マトリックスを下記の通り作成しています。各スキル項目は、長期ビジョンや「2030年のありたい姿」の実現のために必要なものを中心に取締役会での議論を経て選定しています。当社取締役会に求められる知識、経験、能力、見識等は、経営戦略や外部環境の変化に応じて変わり得るため、今後も必要な知識、経験、能力、見識等について取締役会で議論し、必要に応じてスキル・マトリックスを更新します。取締役会の規模については、取締役会の機動性を確保し活発な議論を行ううえで適切な人数とします。また、取締役のうち3分の1以上を独立した社外取締役として選任し、より透明性の高い経営を目指します。

取締役会のスキル・マトリックス

図:取締役会のスキル・マトリックス
  • 取締役および監査役がそれぞれ取締役会に特に貢献できると考える項目に●をつけています。なお、充足の目安を定めており、その詳細についてはコーポレートガバナンス報告書をご参照ください。

社外取締役・社外監査役

出席状況(2022年度) 企業統治において果たす機能および役割
社外取締役
石井 妙子
取締役会
17回/17回(100%)
弁護士として特に労働分野をはじめとする豊富な専門知識と経験を有しています。当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、自身の経験等を背景に特にコンプライアンスや人事・労務関連分野に関して助言をいただき、取締役会の意思決定に参加していただいています。また、独立した客観的な立場から、取締役会を通じて経営に対するチェック機能を発揮しており、ガバナンス委員会の委員として、取締役および執行役員の指名や報酬等の意思決定に際し助言を行うことを通じて株主をはじめとするステークホルダーに代わって経営陣を監督していただいています。これらにより、取締役会の意思決定の質のさらなる向上を実現し、あわせて監督機能を充実していただいています。
社外取締役
木下 学
取締役会
17回/17回(100%)
会社経営およびデジタルビジネスに関する豊富な知識と経験を有しています。当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、自身の経験等を背景に特に事業環境の変化が著しい材料事業やデジタル分野に関して助言をいただき、取締役会の意思決定に参加していただいています。また、独立した客観的な立場から、取締役会を通じて経営に対するチェック機能を発揮しており、ガバナンス委員会の委員として、取締役および執行役員の指名や報酬等の意思決定に際し助言を行うことを通じて株主をはじめとするステークホルダーに代わって経営陣を監督していただいています。これらにより、取締役会の意思決定の質のさらなる向上を実現し、あわせて監督機能を充実していただいています。
社外取締役
西浦 完司
取締役会
会社経営および非鉄金属に関わる事業をはじめ様々な事業に関する豊富な知識と経験を有しています。当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、自身の経験等を背景に、とりわけ長期にわたるプロジェクトや全体的な計画に関して助言をいただき、取締役会の意思決定に参加していただくことを期待しています。また、独立した客観的な立場から、取締役会を通じて経営に対するチェック機能を発揮し、ガバナンス委員会の委員として、取締役および執行役員の指名や報酬等の意思決定に際し助言を行うことを通じて株主をはじめとするステークホルダーに代わって経営陣を監督していただきます。これらにより、取締役会の意思決定の質のさらなる向上を実現し、あわせて監督機能を充実させていただくことが期待できるため、社外取締役に選任いたしました。
社外監査役
吉田 亙
取締役会
17回/17回(100%)
監査役会
18回/18回(100%)
金融機関における豊富な経験と会社経営に関する知見を有しています。当社グループの経営の健全性の確保および中長期的な企業価値の向上を図るため、常勤の監査役と十分な連携を行いながら、自身の知見、経験等に基づき、特に財務や海外プロジェクトに関して実効的な監査を行っていただいています。また、監査の一環として取締役会をはじめとする重要な会議に参加し、意思決定の過程において、独立した客観的な立場から、提案内容の適法性のみならず、妥当性を含め、積極的に忌憚のない意見を述べていただいています。
社外監査役
若松 昭司
取締役会
16回/17回(94%)
監査役会
18回/18回(100%)
監査法人における長年にわたる監査の経験および会計に関する豊富な知識を有しています。当社グループの経営の健全性の確保および中長期的な企業価値の向上を図るため、常勤の監査役と十分な連携を行いながら、自身の知見、経験等に基づき、特に会計分野で実効的な監査を行っていただいています。また、監査の一環として取締役会をはじめとする重要な会議に参加し、意思決定の過程において、独立した客観的な立場から、提案内容の適法性のみならず、妥当性を含め、積極的に忌憚のない意見を述べていただいています。
  • 社外取締役・社外監査役の兼職状況(2023年3月31日現在)は、第98期定時株主総会報告書(電子提供措置事項記載書面)に掲載しています。

取締役・監査役に対するトレーニングの方針

取締役および監査役の研修は、個々人の自己研鑽を基本としますが、自己研鑽に資するよう、トレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行います。
具体的には、新任の取締役、監査役および執行役員に対しては、就任時に役員の法的責任、コンプライアンスおよび法律知識に関する研修を実施します。また、取締役、監査役および執行役員その他を対象として、種々の社内研修を開催し、弁護士その他の社外有識者による講演等を通じて時宜に応じた情報の収集がなされるように努めます。そのほか、社外セミナーの紹介等、トレーニング機会に関する情報を提供します。
上記を含め、取締役・監査役および執行役員のトレーニングに要する費用は、当社が全額を負担します。

取締役の報酬の基本方針と手続

基本方針

当社の取締役の報酬は、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上ならびに経営基盤の強化、維持に資するインセンティブとして十分機能するよう、当社の事業構造を踏まえ、中長期の目標達成のためにモチベ―ションが上がるよう設計した、業績と連動した報酬制度とします。個々の取締役の報酬の決定に際しては、公平性を期すために、あらかじめ決められた計算式に則って報酬額を導き出すこととしており、各職責を踏まえた適正な水準とすることを基本方針とします。
具体的には、取締役(代表権のない取締役会長および社外取締役を除く)の報酬は、基本報酬および賞与とします。基本報酬は、固定報酬(業績連動報酬等および非金銭報酬等のいずれでもないもの)および業績連動報酬等により構成し、賞与は業績連動報酬等とします。代表権のない取締役会長および社外取締役の報酬は、固定報酬のみとし、賞与は支給しません。
基本報酬は、個人ごとの年額を算出し月割りで毎月支給し、賞与は、定時株主総会で承認を得た後に年1回支給します。
詳細は、コーポレートガバナンス報告書に掲載しています。

業績連動報酬等に関する事項

業績指標は、「連結業績(親会社の所有者に帰属する当期利益及び税引前当期利益)」、「部門業績(ROCE(使用資本利益率)、フリーキャッシュ・フロー及びセグメント利益)」、「中長期的な経営戦略に沿って設定される個人目標の到達度」および「安全成績(労働災害の件数)」等を採用しています。

指標の選定理由

  • 連結業績(親会社の所有者に帰属する当期利益及び税引前当期利益)
    企業経営の評価指標としており長期ビジョンにおいて会社が到達すべき利益目標としているためです。
  • 部門業績
    効率性、キャッシュ・フローおよび利益の絶対額という3つの基準でバランスよく評価するためです。
  • 中長期的な経営戦略※に沿って設定される個人目標の到達度
    持続的な企業価値向上の実現のためには、中長期的な視点で着実に計画を遂行していく必要があるためです。
  • 安全成績
    従業員の安全確保を経営の基本としているためです。
  • 21中計で掲げた成長戦略、競争力強化策、サステナビリティ向上策など

業績連動報酬等の金額の決定方法

業績連動報酬等の額は、職位別業績連動報酬等の額に個人別業績反映額を加えて算定します。なお、契約金または採用時インセンティブ、契約終了手当、業績連動型報酬返還(クローバック)制度、退職慰労金はありません。
各算定方法の詳細は、第98期定時株主総会報告書(電子提供措置事項記載書面)「業績連動報酬等に関する事項」に掲載しています。

年間報酬総額の比率(2022年度)

組織の高額報酬受給者と全従業員の年間報酬総額の比率※1 1,039%
組織の高額報酬受給者と全従業員の年間報酬総額増加率の比率※2 71%
  • ※1組織の高額報酬受給者の年間報酬総額は、社内取締役の年間報酬総額(使用人給与を含む)÷員数で算出
    年間報酬総額の比率は、組織の高額報酬受給者の年間報酬総額÷全従業員の年間報酬総額の中央値×100で算出
  • ※2増加率の比率は、組織の高額報酬受給者の年間報酬総額の増加率÷全従業員の年間報酬総額の中央値の増加率×100で算出

経営陣の報酬のインセンティブ付け

当社の業績は、その時々の金属市況や為替相場の影響を大きく受けるため、経営戦略やプロジェクトの達成状況と必ずしも連動しません。また、資源開発や製錬プラント建設に関するプロジェクトは着手から完了まで非常に長い時間を要し、その成果を享受できる時には経営陣の構成が変わっていることも珍しくありません。 このような事業の特性を踏まえ、当社では、報酬が個々の取締役や経営陣に対する健全なインセンティブとして機能することを考慮して、連結業績や中長期的な経営戦略に沿った個人目標の到達度等を評価項目とする業績連動報酬および賞与から成る現在の報酬制度を定めています。現時点では、自社株報酬は経営陣の健全なインセンティブとして有効に機能すると考えていないため導入していません。

監査役の報酬の手続等の額の具体的な決定手続

監査役の基本報酬の額は、株主総会で承認を受けた報酬総額の範囲内において、監査役会における監査役の協議により、個別の監査役の報酬額を決定します。

役員の報酬等の総額

2022年度取締役および監査役の報酬

役員区分 報酬等の総額 報酬等の種類別の総額 役員の
員数
固定報酬 業績連動
報酬等
非金銭
報酬等
取締役(社外取締役を除く) 405百万円 245百万円 160百万円 5名
監査役(社外監査役を除く) 68百万円 68百万円 - - 3名
社外取締役 43百万円 43百万円 - - 3名
社外監査役 24百万円 24百万円 - - 2名
  • 連結報酬等の総額が1億円以上の者は、有価証券報告書において個別開示を行っています。

取締役会全体の実効性についての分析・評価とその結果

取締役会は、適切な業務執行の決定および監督機能の向上の観点から取締役会の実効性を分析・評価しています。2022年度における取締役会の実効性の分析・評価について、その結果の概要は次の通りです。

分析・評価のプロセス

取締役会は、外部評価者(法律事務所)の協力を得て、前年度の課題等も踏まえて取締役および監査役に対する質問票を作成しアンケートを実施しています。回答内容の集計およびその分析も外部評価者に委託しています。取締役会は、回答内容の集計結果、外部評価者による評価および2016年度に確認した「取締役会のあるべき姿(意思決定機能を重視した取締役会を志向していく)」に基づき、2023年2月の定時取締役会において取締役会の実効性について審議し、その評価と今後の対応について確認しました。

分析・評価結果の概要

1)質問票への回答および外部評価者の分析・評価結果

  1. 取締役会の実効性に関わる大半の項目において高評価の回答が示されており、概ね取締役会は実効的に機能していると評価できます。
  2. 自由記述欄においても、現在の体制や運営について肯定する内容の意見が多く、指摘事項も現状をより良くするための意見という側面を持つものが多くありました。
  3. 取締役会における戦略やビジョンに関する審議のあり方について引き続き検討されることが望ましく、また、過年度に指摘された事項(人材確保等)について、引き続き改善に向けた取り組みを検討し、実施することが望ましいと考えられます。

2)取締役会における審議
外部評価者からの助言を踏まえ、以下の各事項について取締役会において審議を行いました。

  1. 取締役会の議題について、事業戦略・経営課題やサステナビリティ等をテーマとした議論のより一層の充実が望ましいとの意見があり、以下の事項を実施することを確認しました。
    a.事業戦略や経営課題について、引き続き議題として取りあげる。
    b.半期に1回のサステナビリティ委員会からの報告に加え、サステナビリティに関する審議機会の拡充を図る。
  2. 過年度に指摘された事項に関する取り組み(特に人材確保等)については、執行側の対応策を踏まえて審議していくことを確認しました。
  3. その他の事項として、議案の審議に資する情報の充実や、資本市場の考え方に関する取締役会へのフィードバック内容の充実等について確認しました。

今後の対応

取締役会は、上記事項について今後継続的に取り組むことにより実効性をさらに高めていくことを確認しました。

監査役監査および監査役会の実効性についての分析・評価とその結果

監査役(会)実効性評価の目的等

監査役は、経営の健全性の確保および当社グループの企業価値の向上を図るため、監査役会が定めた監査の方針、監査計画等に従い、取締役および執行役員の職務の執行等を監査しています。この実効性評価を通じて、監査役会では、監査役監査および監査役会活動を振り返り、改善すべき課題や対応策を検討し、次年度監査計画や日々の監査活動に反映させることでPDCAサイクルを構築しています。

評価プロセス

独立・客観的な立場から評価を実施するために外部専門家である合同会社御園総合アドバイザリーに分析・評価に係る助言を依頼し、その結果を踏まえて監査役会で議論して実施しました。具体的な評価プロセスとして、全監査役に対するアンケート、外部専門家による監査役会議長(常任監査役)および監査役会事務局に対するインタビューならびに全監査役参加による議論(計4回)を実施しました。

評価結果の概要

監査役会は、次の点を確認し、監査役監査および監査役会が十分に実効性を有していると評価しました。

  • 監査役は、取締役会への出席、監査役会における監査役間の協議、監査役監査の活動を通じて、妥当性の観点も踏まえて監査を行い、必要な意見表明を実施している。
  • 監査役は、社外監査役も含めて、経営会議、サステナビリティ委員会、内部統制委員会その他の重要会議等に出席し、取締役等の業務執行状況や内部統制システムの整備・運用が適切に実施されているかを確認し、また、各々の知見・経験に基づき積極的に発言している。
  • 代表取締役をはじめとする執行側へのヒアリングを定期的に実施し、忌憚のない意見交換ができる雰囲気が醸成されており、必要に応じて提言を行っている。
  • 事業所、鉱山、工場、関係会社等の国内・海外各拠点への往査は常勤の監査役と社外監査役の2名体制で実施し(2022年度は24拠点実施)、業務執行状況や固有の課題、内部統制システムの整備・運用状況を自らの目で確認し、必要な助言を行っている。
  • 監査役会では、常勤の監査役が重要な決裁書類等の閲覧や関係部門からの報告等を通じて収集した情報、監査活動の結果を社外監査役と共有し、協議している。
  • 往査を含め、社外監査役は、その職責を適切に果たすために必要十分な時間・労力を振り向けている。
  • 監査役は、社外取締役との会合等において情報共有および意見交換を実施している。

今後の対応

監査役会では、全監査役が参加しての議論を通じて、当社の監査役の役割を次のように整理しました。
「経営陣に対する監視・牽制機能を果たすとともに、非業務執行の立場であることを前提としつつも会社経営に対する強い当事者意識を持ち、各々の専門的知見、経験を基礎として、経営陣に対して監査役としての客観的な観点を提供すること」
こうした監査役の役割を果たすためには、監査役が、会社経営を客観化して把握し、内外の変化を踏まえて機動的かつ柔軟に対応できるための取り組みが求められると考えられます。そのため、監査役会では、本年度の重点的な事項として、次の取り組みを行うことを確認しました。

  • 経営に対する客観的観点を確保し監査役の役割を果たすための監査役会のあり方の定期的な検討
  • 常勤の監査役から社外監査役への事前の情報共有の改善等による往査活動の一層の充実
  • 日々の監査役活動のなかで得た問題意識(テーマ)をより明確にした各部門とのコミュニケーションの強化(テーマのひとつとして経営企画機能等を検討)
  • 外部講師による研修の実施や会社経営に関する重要トピック等についての情報・知識のアップデート

以上のほか、実効性評価のプロセスで確認された個別的な課題について、引き続き検討を行い、適宜改善に努めていくことを確認しました。監査役および監査役会は、今後とも監査活動の実効性の向上を図ることにより、当社グループの経営基盤の強化および企業価値の向上に貢献すべく努めています。

業務執行体制

経営会議

経営会議は、社長および専務執行役員その他関係執行役員等を構成メンバーとしており、取締役会長、社外取締役および監査役も出席することができます。
経営会議は、取締役会決議事項および社長決裁に該当する重要事項のうち慎重な審議が必要な事項について、広い観点から審議を行い、取締役会への上程の可否を決定するとともに、社長による決裁を支援する機能を果たしております。
投資や出資の際には、差別、強制労働、児童労働といった人権問題や、政治制度、経済、治安、地域特有の疾病、労務問題、宗教上の制限、地元社会への影響等のリスクに関して、プロジェクトリスクチェック表を用いて経営会議をはじめとする各種会議体で審議を実施しています。2022年度に経営会議に提案された新規の投資協定は1件あり、人権問題のスクリーニングを実施し、問題のないことを確認しました。引き続き定期的にモニタリングをしていきます。また、撤退案件はありませんでした。

サステナビリティ委員会および内部統制委員会

当社は、社会および環境に関する活動をサステナビリティ推進活動として体系化し、当社グループに展開しています。本活動を推進するために、サステナビリティ委員会(委員長:社長)を設置しています。サステナビリティ委員会の下にサステナビリティ7部会、マネジメントシステム4分科会、企業価値向上戦略会議、DX推進委員会およびカーボンニュートラル推進委員会を設置しています。

政策保有株式について

当社は、事業戦略を進めるうえで、中長期的に事業基盤の強化につながると判断される場合、株式を政策的に保有することがあります。現状保有している政策保有株式については、毎年取締役会において、その保有目的や保有に伴う便益が資本コストに見合うものであるか等について検証を行っています。検証の結果、資本コストに見合わなくなった銘柄や、最近の事業の変化等によって事業関連性が希薄になってきたと判断される銘柄等、保有意義に乏しいと判断された銘柄については縮減を前提とした具体的検討を進めることとしています。
また、当社の株式を政策保有株式として保有している会社から当社株式の売却等の意向が示された場合に、取引の縮減を示唆することなどにより、当該売却等を妨げることはありません。
政策保有株式の議決権行使については、発行会社の業績等の経営状況を踏まえたうえで、各議案が発行会社の中長期的な企業価値・株主利益の向上につながるか、当社の企業価値・株主利益にどのような影響を与えるか等を総合的に勘案し、各議案への賛否を判断します。当社は、各議案への賛否を判断するため、必要に応じて各議案の内容等について発行会社と対話を行います。また、発行会社に重大な不祥事があった場合や一定期間連続で赤字である場合などには慎重な判断を行います。

削減銘柄数推移(非上場株式以外の株式)

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
全部売却 0 4 3 2 5
部分売却 0 1 1 3 3

PT Vale Indonesia Tbkとの関係

当社は、インドネシア共和国のPT Vale Indonesia Tbkの株式の15%を保有し、同社の共同運営を行う株主間契約を、カナダのVale Canada Ltd.およびインドネシア国営企業であるPT Indonesia Asahan Aluminium(Persero)と締結しています。また、この3社にPT ValeIndonesia Tbkを加えた4社による生産物を購入する権利・義務に関する契約を締結しています。これによりPT Vale Indonesia Tbkのソロワコ鉱山の合意した年間生産量についてその20%を購入する権利・義務を保有しています。
同社が2025年以降も操業を継続するために必要な鉱業事業許可取得の条件の1つとして同社に対するインドネシア資本の出資比率を引きあげる必要があり、2020年度において、当社は同社株式を一部売却し、持分法適用会社から除外しました。

保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の保有状況
(みなし保有を含む「非上場株式以外の株式」)

図:保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式の保有状況(みなし保有を含む「非上場株式以外の株式」)
  • 2020年度については、PT Vale Indonesia Tbkが持分法適用会社から除外になったことにより、保有銘柄数は1銘柄増加しております。