経営方針・戦略

事業上のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、2022年3月31日において当社グループが判断したものであります。

非鉄金属価格及び為替レートの変動

非鉄金属価格の低下

銅、ニッケル、金などの非鉄金属の価格は、ロンドン金属取引所(LME:London Metal Exchange)、その他の国際市場において決定されます(以下、それらの市場において決定された価格を、LME相場等という)。LME相場等は、国際的な需給バランス、政治経済の状況、投機的取引、さらには代替素材の競争力などの影響を受けて変動します。それらの影響により銅、ニッケル、金などのLME相場等が著しく低下し、その状態が長期間続いた場合、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

為替レート(円高)

銅精鉱、ニッケルマットなどの輸入原料だけでなく、非鉄金属地金の国内価格につきましても、米ドル建てのLME相場等を基準に決定されることから、当社が製錬事業から得る製錬マージンは実質的に米ドル建てであり、海外への鉱山投資や製品等の輸出から得られる収入も外国通貨建てであります。したがって、為替レートが大きく円高に振れ、長期間継続した場合、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

2022年度の業績予想において、非鉄金属価格変動及び為替レート変動が連結税引前利益に与える影響は、以下のとおり試算しております。

変動要素 変動幅 連結税引前利益に与える影響
±100$/t 26億円
ニッケル ±10¢/lb 17億円
±10$/TOZ 2億円
為替レート(米ドル) ±1円/$ 22億円

(注)上記の為替レート変動の影響額は国内の金属加工収入及び海外換算為替差の合計となります。

これらに対し当社グループでは、資源事業及び製錬事業のコスト低減を図るとともに、非鉄金属価格や為替レートの変動の影響を比較的受けにくい材料事業の収益安定化をめざしてまいります。また、必要に応じて、非鉄金属価格及び為替レート変動のリスクヘッジを目的とした為替予約取引、商品先物取引、通貨・商品オプション取引を利用してまいります。

非鉄金属原料の購入契約条件の悪化及び供給障害

銅精鉱、ニッケルマットなどの非鉄金属原料の調達について、投資に裏打ちされていない長期買鉱契約によるものもあります。長期買鉱契約については、原料購入条件について毎年改定交渉を行いますが、その際さまざまな市場の要因により必ずしも必要量を購入することができない場合があります。さらに、製品価格は需給など主に非鉄金属地金自身の要因により決まることから、製品価格に原料購入条件の悪化を転嫁することが難しい場合があります。また、異常気象、大規模地震、供給者の操業上の事故、労働争議、人権侵害及び法令違反など、当社の管理が及ばない事態により原料の供給が事態の解決まで停止することがあります。これらにより当社グループの生産が制約を受け、財政状態及び経営成績の悪化につながる場合があります。
これらに対し、当社グループは優良な海外鉱山等への投資を進め、その経営に関与することを通して安定した原料ソース(自山鉱)とコンフリクトフリーの原料の確保を進めております。

鉱山投資の不確実性

当社グループは、上述のとおり原料の安定確保に向けた鉱山投資を行っていく方針ですが、鉱山開発の難度上昇に伴い優良案件の権益獲得競争が激化するとともに参入コストは増大しております。さらにそのような中、鉱山開発の着手後には探鉱結果に基づき想定した採鉱可能埋蔵量及び採鉱コストと実際が異なる、あるいは将来異なっていくことにより投資回収が想定どおり進まない可能性があります。また、環境行政上の手続き及び地域住民の反対運動を含むさまざまな事態により生産開始が遅延し、開発費用の負担が増加する可能性があります。これら鉱山投資の不確実性に起因する追加投資あるいは採鉱コスト上昇の負担が、当社グループの財政状態及び経営成績の悪化につながる場合があります。
これらに対し当社グループは、地域社会との共存を中心としたソーシャルライセンスの獲得を重視するとともに、長年にわたる探鉱経験及び鉱山評価ノウハウの蓄積に基づく慎重な採算性判断により厳選した投資を実行しております。また新規のプロジェクトにおいては、開発の準備段階よりかかる不確実性リスクの軽減・回避に努めております。

HPAL技術の優位性低下

当社グループは世界に先駆けてHPALの商業生産に成功し、現在フィリピン国内の2拠点で操業を継続しております。このHPAL技術は今まで資源化されてこなかった低品位のニッケル酸化鉱からニッケル・コバルトの回収を可能とした、当社グループにとって重要な技術の一つです。しかしながらHPALの商業生産開始後15年以上が経過し、他社でもHPALプロジェクトの計画・稼働が始まるなど、優位性の低下に繋がる動きが活発化しております。また、HPALに代わる画期的な新ニッケル製錬方法の出現の可能性などが優位性を脅かす要因として考えられます。
これらに対し当社グループでは既存のHPAL技術に磨きをかけ、安定操業・コスト低減に向けた活動を継続することで優位性を維持するとともに、未利用資源となっているニッケル低品位鉱石のさらなる活用に向けた新プロセスの研究開発も実施していきます。

環境保全と法令遵守

当社グループの事業、特に鉱山業及び非鉄金属製錬業は、労働安全、労働衛生、環境保全、鉱害又は公害防止、鉱業又は産業廃棄物処理、毒劇物管理など広範な法令の適用を受けております。それらの法令により、事業者の過失の有無に拘わらず損害補償や休廃止した鉱山の維持管理を課せられることがあり、新たな環境規制などにより追加の費用負担が発生する可能性があります。また、鉱山業及び非鉄金属製錬業は、環境汚染と鉱業又は産業廃棄物処理のリスクとそれに対応する責任を負っております。さらに環境保全については法令順守にとどまらず、より積極的かつ先んじた取組みが求められております。
関係法令を遵守しつつ事業を経営していくため、相当額の必要コストを負担しなければならない場合、また不測の事態によりリスクが顕在化し、その対応に要するコストが想定を上回る場合、さらには環境に関する社会の要請が今後より高度な水準でなされ、当社グループが迅速かつ適切に対応できないあるいはその対応に遅れが生じる場合には、コスト負担に加え当社グループの企業ブランド価値の毀損や事業活動の縮小あるいは停止などの可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績へ影響を及ぼすことが考えられます。
このため、当社グループは環境マネジメントシステム及びリスクマネジメントシステムを整備し運用することで、環境保全と法令遵守に万全を期すとともに、予期せぬコスト負担を最小限に抑えるべく努めております。また、「2030年のありたい姿」の実現に向けた進捗管理を行い、適宜対応することでリスクの低減を図ってまいります。

市場変化と新商品開発

材料事業が対象とする市場では、利用技術、顧客要求、商品寿命が急速に変化する一方で、新商品の開発は長期化し、多くの資金及び人材投入を要することがあります。また、新商品の市場投入後、技術進歩により当該商品が陳腐化した場合や、変化する顧客要求に対応できない場合及び競争相手による同等品の市場占有が進行した場合には、要した投資の回収が計画通りに見込めないこともあります。加えて、材料事業の主要製品の販売量は、車載用二次電池、情報通信端末などを製造する顧客の生産水準の影響を強く受け、顧客が製造するこれら製品需要の周期的変化、技術革新の進展、経済動向、国際関係の変動によるサプライチェーンの再編等の要因によって変化します。これらにより材料事業における新商品開発及び既存商品の販売が計画どおりに進まない場合、当社グループの財政状態及び経営成績へ影響を及ぼすことが考えられます。
当社グループでは、成果の早期実現をめざした研究開発体制を敷き、影響の軽減を図っています。また国の支援制度の活用や社外との共同開発、産学連携等を通じて、開発を加速させてまいります。

知的財産

当社グループは、知的財産権の獲得と管理の重要性を認識し、法令にしたがって取得保全手続きを行っておりますが、知的財産権の保全手続きにつきましては必ずしも確実に取得できるものではなく、第三者との係争、第三者による違法な行使などにより当社の研究開発成果の享受が脅かされる場合が考えられます。
当社グループでは、知的財産権管理の専門部署を設け、確実な取得及び保全に努めております。

品質問題

当社グループは、製造・販売する製品・サービスにおいて、厳しい品質管理のもと、顧客からの要求事項をクリアした品質の確保に努めています。しかしながら、顧客の要求事項を満たさない製品・サービスが流出し、それが顧客の製品にまで影響が及び法令違反やユーザーの生命や健康を損ねる場合には、大規模リコールなどによる当社グループに対する社会的信頼の失墜等が生じ、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、顧客の満足を得られる製品・サービスを提供するため、ISO9001に基づいた品質マネジメントシステム(QMS)を確立し、品質方針・全社品質目標を定めて、当社グループが求めるQMSのあるべき姿をまとめたSMM品質標準を基準にして改善に取り組んでいます。また、当社グループの品質保証の推進及びその改善を図るため、品質分科会を運営し、施策の審議と実施状況の確認を行っております。このような組織・仕組みのもとで、当社グループのQMSを有効に機能させ、更なる品質の向上と管理強化に努めてまいります。

海外進出

当社グループは、製品の製造拠点及び販売の市場を海外に求め、国際的に事業を展開しております。海外における事業活動につきましては、政情不安、環境・労働・課税・通貨管理・貿易上の法令及び規制の変化、知的財産権等の法的権利の限定的保護あるいは不十分な強制力、外国為替の変動、財産の没収あるいは国有化など個々の国ごとに政治的、経済的リスクが存在しております。非鉄金属価格の高騰などを背景とする国家や地方政府による資源事業への介入・増税への動き、あるいは各方面からの環境対策要求の高まりなどを含め、それらのリスクの顕在化により当該投下資金の回収を達成しえなくなる場合が考えられます。
事業のグローバル展開に伴い、当社グループではカントリーリスクを十分に検討し、投資の意思決定を行っております。また進出後も現地の状況のモニタリングを継続し、変化に応じて適宜対策を講じております。

自然災害等

当社グループの製造拠点は、顧客との関係、原料調達上の有利性、グループ内関連事業との連携、経営資源の有効活用などの点を考慮し立地していますが、それら地域に大規模な地震、風水害等不測の災害や事故が発生した場合、損害が多額になるとともに当該製造拠点での生産が大幅に低下する可能性があります。
これら自然災害や重大事故に対し当社グループでは、建屋の耐震補強や津波発生時における浸水対策工事等を進めると同時に可能かつ妥当な範囲で保険を付し、二次的な影響を抑えるための体制の整備及び対応を図っております。

気候変動対応

国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択され各国で批准されたことを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされるGHGの削減を目的とした枠組みが世界的に進められており、環境規制も強化されています。今後、環境規制のさらなる強化により環境負荷物質の排出責任者として応分の負担(炭素税等)による業績への悪影響だけでなく、さらなる排出量規制に対応できない場合には事業活動の縮小あるいは停止などの可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績へ影響を及ぼすことが考えられます。
当社グループは気候変動の重大性を認識しており、2020年3月に「TCFD」(気候変動関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)への賛同を表明しております。また、「2030年のありたい姿」で重要課題として掲げている気候変動への対策を積極的に進め、当社グループのGHG排出量の削減・カーボンニュートラル社会の実現に資する製品の研究開発など、目標の達成に向けた取り組みを継続してまいります。

労働者不足

当社グループは事業継続に必要な労働力の維持・拡充を適宜行っておりますが、国内においては今後少子高齢化による労働人口の減少により労働力の確保が今まで以上に難しくなることが想定されます。必要人員の確保ができなくなった場合には、製造現場での生産体制が維持できず減産につながるなど、事業継続の基本に関わる問題となります。またそこまでに至らなくとも、人的資本の不足により新規プロジェクトへの参入機会を逸失することで、企業として成長機会を失う事態も十分に考えられます。
このような事態を回避するため、働き方改革や自由闊達な組織風土の再構築などに取り組み魅力ある企業としての体制を整え、人材の確保と育成を図ってまいります。また、デジタルテクノロジーの導入により合理化・省力化を進めることで必要とされる労働力の低減を進めてまいります。

情報管理

当社グループは、事業を展開する上で、顧客及び取引先の機密情報や個人情報及び当社グループ内の機密情報や個人情報を有しています。これら情報の外部流出や破壊、改ざん等が発生した場合には、損害補償等により当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、在宅勤務等によるテレワークの増加に合わせて、よりセキュリティに配慮した通信・勤務環境を整備する必要が生じています。
これらに対し、当社グループでは、多層的なセキュリティ対策システムの導入及び更新、見直しを行うとともに、従業員に対する情報セキュリティ教育を実施しております。

DXへの対応

情報通信技術分野におけるテクノロジーの進化や、ビッグデータの解析、AI、シミュレーション等の著しい進展、ロボティクス技術の進歩等を受け、ビジネスの分野においてDXは業務やビジネスモデルに抜本的な変革をもたらしており、一部の海外鉱山では操業の遠隔監視や鉱石の自動搬送等の形で実用化されています。この変化への対応は競争力の維持、向上というチャンスに繋がる一方で、DX分野への経営資源の投入が過小であったり遅れた場合には必要な対応が取れず、競争力の喪失や収益力の毀損につながる可能性があると考えています。
当社グループとしてもこの変化へ積極的に対応すべく、DX導入を推進する組織を整備し具体的な検討・対応に努めてまいります。

感染症の流行

現在、全世界で蔓延している新型コロナウイルス感染症だけでなく、今後も新たな感染症の流行により、急激な需要収縮やサプライチェーンの途絶による操業停止など、当社グループの業績は大きな影響を受けることが十分に考えられます。
当社グループとしては業績への影響を最小化するため、原料などの代替調達先の確保などに取り組み、生産縮小・停止による供給障害を極小化させる体制を整えてまいります。また、取引先や従業員の安全を最優先に、テレワークによる接触機会の低減、フレックスタイムや時差出勤等の通勤手段の柔軟な対応、BCP(Business Continuity Plan)の見直しや訓練実施等の対策を引き続き展開してまいります。