地域住民・先住民との対話
地域コミュニティとの関わり
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青梅事業所と多摩大学総合研究所で協働し、立地地域貢献度調査として対話と連携のモデル事業を実施しました。本調査の目的は地域課題を調査により特定し、課題解決に貢献する当社らしいプログラムを開発し運用、評価することです。
地域コミュニティからの苦情・相談対応
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鉱山や関連施設の開発のためやむを得ず地域住民の方々に住宅の移転をお願いする際には代替地を用意し、事前に理解を得ています。菱刈鉱山では、1983~1989年に地域に住む3世帯の方々に移転をお願いしました。タガニートHPAL(THPAL)では影響を受ける地域に住む41世帯の方々に移転をお願いしました※。
地域住民を対象とした人権デューディリジェンス・プログラム実施を検討しています。
各事業場で行政や地域社会から苦情が来た場合は、適切な対応をするとともに社内で関係部署に情報を共有します。また、半年ごとにすべての苦情内容を当社の所管部門に報告しています。2024年度に当社グループに地域住民から寄せられた苦情件数は5件あり、すべての苦情について適切な対応を行いました。
また、これまで鉱山が休廃止した時などは地域の雇用を維持するために別の事業の工場を建設するなどをしています。例えば、資源枯渇により鉱山での採掘を中止し製錬所として稼働していた国富鉱山は1973年に製錬所も中止した後、電子部品材料の製造工場に転換しました。現在は、住鉱国富電子(株)として結晶材料や磁性材料をはじめとした高品質な製品を提供しています。
- 移転は、世界銀行の「非自発的移住に関する世界銀行業務指針」に沿って計画され、すべての住民の方々の同意を得て、2010年12月までに完了しています
 また移転後も住居の修理や整備、住民が将来にわたり所得を得ることができるような技能やノウハウの習得を促す生計回復支援プログラムなどの支援を継続しています
先住民との対話
GRI 2-24/2-25/411-1/G4-MM5/G4-MM6/G4-MM6/G4-MM7
鉱山開発や製錬事業においては環境や地域社会へ及ぼす影響が大きいことから、一般に弱い立場であるその土地で暮らす先住民の権利を侵害するおそれがあります。そのため先住民の理解と信頼を得ながら事業を進めることが大前提であると考えます。当社グループは、先住民の特徴的な権利の1つである「自由で事前の十分な情報に基づいた同意(Free, prior and informed consent: FPIC)」の権利の配慮を謳った「先住民族の権利に関する国際連合宣言(UNDRIP)」や国際金属・鉱業評議会(ICMM)のポジションステートメントなどの国際規範を尊重します。事業地域の行政など関係するステークホルダーとも協力しながら、先住民との相互理解・相互信頼の醸成を目指し先住民の伝統と文化を理解したうえで対話を続けていきます。
フィリピンでは、行政や地域住民等のステークホルダーと協議を重ね環境適合証明書を取得し、2005年にコーラルベイニッケル(CBNC)、2013年にTHPALの操業を開始しました。操業開始後も、現地法令に則り地域の社会開発(Social Development)を執行する組織を設置し、社会開発マネジメントプログラム(Social Development and Management Program: SDMP)に取り組んでいます。具体的には、CBNCはリオツバ周辺の11カ所のインパクトバランガイを含む22のバランガイ※と、THPALは近隣の4カ所のインパクトバランガイを含む14のバランガイと定期的に情報交換を実施しています。この情報交換に基づき、健康・教育・福祉・生計などのカテゴリごとに予算を編成し、行政の承認を得たうえで無料の健康診断や治療、農業支援などを実施しています。また、SDMPに含まれない活動についても別途予算を編成し、先住民の文化や独自言語を教育する先住民のための学校や集会所の建設なども実施しています。
カナダでは、2020年に建設移行決定したコテ金開発プロジェクトにおいてパートナーであるアイアムゴールド社とともに、プロジェクトによって影響を受ける先住民団体にプロジェクトを理解いただくことを目的に各許認可の事前説明はもとより、継続的な対話を実施しました。先住民団体主催の文化研修等への参加などにより相互理解・相互信頼を醸成した結果、先住民団体との互恵に関する同意(Impact Benefit Agreement)の締結に至りました。現在は先住民団体およびパートナーと協力し、開発予定地に存在する湖と同じ水表面積を持つ新しい湖を建設し、既存の湖に生息していた水生生物を新設の湖や周辺水系に放流することによる生物多様性の保全などを実施しています。
なお、当社が50%を超える権益を持つすべての鉱山・製錬所周辺において、土地使用ならびに先住民の慣習上の権利に関する重大な紛争として報告された事案はありません。また、これに関してJaCER(苦情処理プラットフォーム)等の窓口に寄せられた苦情はありません。
- フィリピンの都市や町を構成する最小の地方自治単位であり、村または地区、区を示します
先住民に関する社内教育の実施
GRI 2-24/2-25
当社グループは、先住民とはどういう人々なのか、当社グループが「先住民の権利」に対してどう取り組むべきか、ということを従業員が理解することを目指し社内教育を実施しています。教育においては、トップメッセージや当社グループの事例紹介により従業員が自ら関わる問題として理解することを目的としています。また内容については、先住民に関する専門家※との対話を続け公正な内容になるようご指導いただいています。
引き続き、専門家のご指導のもと、先住民や先住民の伝統と文化について当社グループ従業員の理解がさらに深まるよう取り組みます。
- 尾本惠市氏(東京大学名誉教授)、西原智昭氏(星槎大学教授)、野口栄一郎氏(NGO「Taiga Forum」メンバー)
専門家やNGO、NPOとの対話
GRI 2-29
事業進出地域周辺からの雇用 、現地サプライヤーからの調達などの直接的な経済面での貢献度を高めるとともに、特に発展途上国においては道路や港湾などのインフラの整備、必要とする施設の建設、学校や病院、市場といった公益施設の建設・運営、学校支援として教材や運営に必要な物資の提供 、地域住民への無償医療支援や自活のための生計支援活動の推進などを通じて地域住民の生活向上へ寄与しています。これらの施策については、地域コミュニティとの定期的なコミュニケーションの機会を設け 、地域住民の方々からの要請を確認しながら進めています。また、国際環境NGO団体「 FoE Japan」とフィリピンのコーラルベイニッケル、タガニートHPAL周辺河川の水質などに関する同団体からの指摘について意見交換を年2回行い、その意見・提言も参考にして必要な改善策に取り組んでいます。