人的資本経営

ウェルビーイング

当社グループは、人的資本経営に関わる「2030年のありたい姿」として「多様な人材が集い、成長し活躍できる企業」を掲げており、このベースには、従業員のウェルビーイング(※)があると考えています。

  • (※)ウェルビーイング(Well-being)は、直訳すると「良く生きること」「幸福であること」を意味し、個人や集団が心身ともに健康で、満足感や充実感を感じながら生活している状態を指す概念

当社は、非鉄金属の資源確保から製錬、高機能材料の提供までを一貫して行っており、様々な職場に、多様な従業員がいます。それぞれの従業員が、それぞれの職場でウェルビーイング高く働くことは、個人や組織が本来の力を発揮するために欠かせません。
当社グループは、従業員の安全と健康の確保に優先的に取り組んできました。すべての従業員が心身ともに健康で活き活きと働けるように、一人ひとりの従業員が自身の健康維持・増進に努め、会社が働きがいや働きやすい職場を提供していくことが重要であると考えます。ウェルビーイングの向上を通じて、従業員のモチベーションや生産性の向上、ひいては企業の持続的成長につなげていきます。

健康経営

GRI 3-3/403-6

当社グループでは、労働安全衛生の観点から、早い段階で役員・従業員の安全と健康の確保に優先的に取り組んできました。当社グループで働くすべての人がより健康で活き活きと働けるよう、2022年に「住友金属鉱山グループ健康経営方針」を制定し、中長期的な取り組みと目標を定めた「従業員の健康づくり推進ロードマップ」と単年度ベースでの「健康経営推進計画」を策定しました。2025年には、健康経営を全社横断的に展開するための統括部署として、人事部内に健康経営推進室を設置し、「従業員の健康づくり推進ロードマップ」と「健康経営推進計画」を統合し「健康経営ロードマップおよび2025年度推進計画」を作成しました。この計画にもとづき、住友金属鉱山健康保険組合とも協力し、効果的な心身の健康維持・増進施策を展開しています。

住友金属鉱山グループ健康経営方針

住友金属鉱山グループは、役員・従業員が心身ともに健康で最大限に能力を発揮できることが重要な経営基盤であると認識し、一人ひとりの健康維持・増進を図る取り組みを推進していきます。

住友金属鉱山グループ
健康経営トップメッセージ

代表取締役社⻑  松本 伸弘

■ 住友金属鉱山グループ健康経営推進体制

GRI 403-6

図:住友金属鉱山グループ健康経営推進体制
■ 健康経営戦略マップ
図:健康経営戦略マップ

健康経営戦略マップの用語解説

ワークエンゲージメントの向上

エンゲージメントとは、会社組織と従業員の相互の関係性や結びつきを表し、従業員が会社の目標、価値観に対してどれだけ深く関与し、共感し、情熱を持って働いているかを示す指標となるものです。職場環境全体の向上にもつながり、企業の成長や成功を支える重要な要素となります。

プレゼンティーズムの改善

プレゼンティーズムとは、出勤しているけれども、体調不良やストレスなどの健康問題を抱えており、本来のパフォーマンスを発揮できない状態を指します。例えば、花粉症で頭がボーッとして仕事に集中できない、二日酔い、寝不足、頭痛などです。
本来のパフォーマンスを発揮することは、業務上のミス防止や安全確保、品質維持、残業削減につなげることができます。
当社では、測定方法として「東大1項目版」を用いています。病気やけががないときに発揮できる仕事の出来を100%としたときに、過去4週間のご自身の仕事の評価をすることで測定します。
例えば、頭痛持ちの方の場合、頭痛がなく本来のパフォーマンスを発揮できているときが100%ですが、設問に対する回答が70%である場合、プレゼンティーズムは30%になります。
プレゼンティーズムは「隠れた損失」とも呼ばれ、厚労省のデータによれば、従業員の健康関連コスト(医療費やアブセンティーズムも含む)の78%がプレゼンティーズムです。従業員一人ひとりがプレゼンティーズムの改善に努めることで、職場の生産性向上と企業の持続的成長につながります。

アブセンティーズムの改善

アブセンティーズムとは、心身の体調不良が原因による遅刻や早退、就労が困難な欠勤、休職など、業務自体が行えない状態を指します。結果的に職場の生産性や業務効率が低下する要因になると考えられています。
従業員一人ひとりが心身の不調を原因とした欠勤を減らすことで、各人のWell-being(ウェルビーイング)と職場の生産性を両立させることが可能となります。

直近の調査結果
エンゲージメント※1 47.7(2024年度)
プレゼンティーズム※2 19.7%(2024年度)
アブセンティーズム※3 1.66日(2024年度)
  • ※1「企業と従業員の相思相愛度合い(信頼関係の度合い)」を表す客観的評価スコア。他社を含めた平均を50.0として算出。
    当社グループ(当社+調査対象国内関係会社)の調査結果数値。
  • ※22024年度から調査開始。東大一項目版に基づいて算出。
    当社単体の調査結果数値。
  • ※3欠勤・休業日数の従業員平均を算出。
    当社単体の調査結果数値。

健康経営ロードマップおよび2025年度推進計画

GRI 403-6

取り組み段階 取組項目 KPI 直近実績 中期経営企画2027期間 2030年度目標
(中期経営計画2030最終年度)
2025年度
目標
2026年度
目標
2027年度
目標
健康リスクが高い方の改善フェーズ(対象:ハイリスク者) Ⅰ 生活習慣の改善 40歳以上の中リスク以上(要受診、主治医面談)の比率 26.8%
(2024年度)
26.8% 25.0% 23.0% 18.0%
Ⅱ 喫煙の低減 喫煙率 24.1%
(2024年度)
22.0% 19.0% 16.0% 12.5%
Ⅲ 飲酒の低減 1日当たりの平均飲酒量が男性2合以上、女性1合以上の者の比率 8.7%
(2024年度)
8.1% 7.5% 7.0% 5.0%
健康リスク低減と健康増進フェーズ(対象:全員) Ⅳ メンタルヘルス対策の再徹底 メンタルヘルス不調による休業率 0.25%
(2024年度)
0.40% 0.39% 0.38% 0.35%
Ⅴ 肥満の低減 40歳以上の肥満率(BMI25超)
①男性
②女性
①37.0%
②21.9%
(2024年度)
①36.0%
②22.0%
①33.0%
②20.5%
①28.0%
②19.0%
①26.0%
②18.0%
Ⅵ がんの早期発見 がん検診受診率 未測定
(2024年度)
目標設定予定
Ⅶ 女性特有の健康課題の理解促進 全従業員の教育受講率
(2024年度)
20% 30% 40% 80%

メンタルヘルスケアへの対応

GRI 403-6

当社は、2007年に「過重労働による健康障害防止とメンタルヘルスケアに関する社内指針」を発信し、早期から過重労働の防止や、メンタルヘルス4つのケア(「セルフケア」「ラインによるケア」「スタッフによるケア」「外部機関によるケア」)の推進、試し出社制度や休職制度整備に取り組み、職場への早期復帰を支援しています。

疾病予防および健康増進の取り組み

GRI 403-6

当社グループは、住友金属鉱山健康保険組合と協力し、従業員とその家族(被扶養者)に対し、疾病予防および健康増進の取り組みを行っています。生活習慣病予防のための特定健康診査の受診、特定保健指導の実施を推進し、特に重症化リスクの高い者への受診勧奨や保健指導を行っています。各種検診・人間ドック・脳ドックについては、費用の全額や一部を補助しています。人間ドック受診時は、健康管理休暇(1年につき最大2日)を取得することができます。
また、卒煙推進として、喫煙所数の削減や希望者にオンライン卒煙プログラムを提供しています。卒煙プログラムは、参加者の約7割が卒煙に成功しています。

主な疾病予防・健康増進事業

  • メタボリックシンドロームの予防改善のための特定健康診査、特定保健指導
  • 人間ドック、脳ドック、大腸がん検診、腹部超音波検診、胃部X線検診、歯科検診、HPVウイルスセルフチェック
  • 生活習慣病の重症化リスクの高い者への受診勧奨、糖尿病腎症ハイリスク者への保健指導
  • オンライン卒煙プログラム
  • 常備薬の斡旋販売
  • ゲノム解析による疾病リスク把握
■ 喫煙率の推移と目標
グラフ:喫煙率の推移と目標

対象は、40歳以上の住友金属鉱山(株)社員(特定健診の問診結果)

■ 有所見者率※1および肥満率※2の推移と目標
グラフ:有所見者率※1および肥満率※2の推移と目標
  • ※1対象は、住友金属鉱山健康保険組合の被保険者
  • ※2対象は、40歳以上の住友金属鉱山(株)社員
■ 人間ドック受診率および人数
グラフ:人間ドック受診率および人数
  • 対象は、18歳以上の住友金属鉱山健康保険組合の被保険者

長時間労働・過重労働の防止/多様な働き方と労働生産性

当社は、長時間労働・過重労働に関する各国・地域の法令を遵守しています。日本国内においては、2003年から、過重労働による健康障害を防止するための取り組みとして、月45時間を超えて時間外労働を行った社員についての事業者への周知や、月80時間を超えて時間外労働を行った社員への産業医の保健指導を実施しています。
また、年間総実労働時間の社員平均1,900時間以下を目標に掲げ、労働時間の削減に取り組んできました。労働時間の進捗については、執行役員会議で毎月報告しています。職務に応じた多様な働き方(在宅勤務やフレックスタイム制)を認めることで、積極的に業務に取り組むことにつながり、労働時間の削減および生産性向上を推進しています。本社地区ではコアタイムレスのフレックスタイム制を導入しており、社員の自律性に基づいた柔軟な働き方を実現しています。また、年次有給休暇の取得を促進するため、事業所ごとに労使で対話を行い、事業所ごとの実態を踏まえて施策を検討し、実行しています。これらの取り組みにより年間総実労働時間が減少したことを踏まえ、2021年4月より、すべての勤務形態の年間所定労働時間を1,920時間に一本化しました。
2024年度の年間総実労働時間は1946.7時間(住友金属鉱山全社員平均)、有給休暇取得率は87.2%(住友金属鉱山年間在籍社員平均)となりました。

■ 年間平均総実労働時間※1および有給休暇取得率※2の推移
図:年間平均総実労働時間および有給休暇取得率※2の推移
  • ※1年間平均総実労働時間=所定労働時間(欠業、有給休暇等を除く)+所定外労働時間
  • ※2対象は、住友金属鉱山(株)の年間在籍者(ただし期間雇用者のうち特別雇員は含まない)

ファイナンシャルウェルビーイングへの取り組み

GRI 3-3

当社グループは、従業員一人ひとりが安心して長期的に働き続けられる環境づくりの一環として、「ファイナンシャルウェルビーイング(経済的健康)」の向上にも力を入れています。従業員の経済的自立や資産形成支援、ライフプラン設計・金融リテラシー強化を目的とし、以下の取り組みを展開しています。

ファイナンシャルウェルビーイング向上のための投資教育の増強

当社グループは2024年度にeラーニングによる「金融リテラシー・資産形成教育プログラム」を開始し、2025年度には社内ポータルサイト上に「投資教育 -今後のライフプランを考えよう-」のページを新設しました。主に以下の内容を展開しています。

  • 投資教育の重要性や資産形成の基礎知識を、物価上昇やライフイベントの多様化等の現代的課題に即して動画等でわかりやすく解説
  • 預貯金・投資信託・債券・株式・保険・暗号資産など主要金融商品の特徴やリスク・リターンを表形式で紹介。リスク強度・リターン、水準ごとのポイント、長期運用や分散投資、適切な年金運用の重要性なども分かりやすく整理
  • 企業型確定拠出年金(DC)についての詳細情報や資産形成への活用方法を案内

また、全従業員が自身のタイミングで学習可能なように、スマートフォン等多様なデバイスに対応し、利便性を高めています。今後も情報・教育機会の充実や相談サポート体制の強化により、長期的な安心とファイナンシャルウェルビーイング向上を支援していきます。

社員持株会制度

当社の社員持株会は、社員の長期の財産形成に役立てることを目的とし1982年に発足しました。当社社員および関係会社社員(嘱託・嘱託員を含む)を会員とし、給与、賞与から当社の株式を購入する資金を拠出します。会社からの奨励金は拠出金の12%であり、配当金は各人の株式購入資金として再投資されます。2024年度から、社員持株会・グループ社員持株会の加入者に対し、特別奨励金として株式を付与する制度を導入しました。持株会新規加入者には50株を、1年間継続拠出した方には10株をそれぞれ付与し、社員の資産形成支援と経営意識向上を推進しています。本制度の継続により、社員が安心して働ける職場風土の醸成と、当社の持続的成長を目指します。なお、2025年3月1日時点の加入率(単体)は68.0%となっています。

企業型確定拠出年金(DC)「ライフプラン支援金」制度

当社では、社員が安心して将来設計し、豊かなセカンドライフの実現に向けて、企業型確定拠出年金(DC)「ライフプラン支援金」制度を導入しています。管理職社員は給与から、一般社員は賞与から掛金を積み立て毎月拠出し、掛金額は社員の選択に応じて給与や賞与の明細書に分かりやすく記載するなど、制度の透明性向上に努めています。今後も全社員の安定した資産形成を多面的にサポートしてまいります。

長期的インセンティブ・褒賞制度

GRI 401-2

退職金・企業年金制度

当社では、社員の長期的な安心と働きがいに資するため、法的義務を上回る独自設計の「退職一時金」「確定給付企業年金(DB)」「確定拠出企業年金(DC)」の三本柱による多様な退職給付制度をグループ各社で導入しています。多様化する高齢期のライフスタイルや雇用形態の変化に柔軟に対応しつつ、退職後の生活の安心・安定に寄与しています。
2023年度の総合職人事制度改正に伴い、総合職については、職務および勤続年数に応じたポイント制退職金制度を導入しました。また、社員の貢献を適切に反映する観点から、自己都合退職時の退職金減額制度(支給率)を廃止し、公平性を高めています。これにより、人材流動化への対応とともに、長期的な定着・活躍を支援しています。

1)確定給付企業年金(DB)制度
「第1年金」と「第2年金」で構成し、10年または15年の確定年金として給付しています。市場平均を上回る水準で、積立は60歳まで、複利運用は65歳の定年退職まで継続となります。

2)確定拠出企業年金(DC)制度
2017年6月に導入した任意選択制で、賞与を原資とした積立方式を採用しています。ライフプランや希望に応じて自由度の高い運用が可能です。

3)退職一時金制度
会社規定に基づき、一定年数以上勤務した場合に、勤続年数や職責に応じた一時金を支給しています。DB・DCと合わせることで、より充実した退職後の生活設計を支援しています。

永年勤続表彰

当社では、長期間にわたり誠実に勤務した社員の貢献に感謝し、毎年、会社創立記念日(3月1日)にあわせて永年勤続表彰を実施しています。表彰は、創立記念日の前日までの1年間に勤続満10年、20年、30年、40年に達した社員を対象に行っています。表彰対象者には、賞状とともに旅行専用券と休暇を授与しています。

功績社長(部門長)表彰、社長感謝状

日常の業務を通じて極めて著しく会社に貢献した場合、規模または業績に応じ、社長または部門長より、その努力と功績をたたえ、個人またはグループ・職場単位を賞状と副賞または感謝状をもって年1回表彰しています。