サーキュラーエコノミーへの貢献
電池リサイクル
長期的な進展が見込まれている自動車の電動化と電池の高容量化に伴い、電動車に搭載されるリチウムイオン二次電池(LIB)に用いられる銅、ニッケル、コバルト、リチウムの需要は拡大し、リサイクルによる資源循環が求められています。
当社は、2017年からLIBに含有される銅およびニッケルについて、東予工場の乾式銅製錬工程とニッケル工場の湿式ニッケル精錬工程を組み合わせたプロセスによる再資源化を実施しています。回収されたニッケルは磯浦工場で二次電池用の正極活物質に加工され、日本で初めて使用済みLIBからの"電池 to 電池"の水平リサイクルを実現しました。当社のLIBリサイクルプロセスは、乾式製錬と湿式精錬を組合せた独自の技術により、不純物含有量の多い使用済みLIBを効率的に処理することができます。
2022年には関東電化工業(株)との共同開発により、リチウムを乾式スラグから高純度リチウム化合物として再資源化する技術を確立し、銅、ニッケル、コバルト、リチウムを水平リサイクルする新プロセス開発に成功しました。
2024年3月には東予工場とニッケル工場の敷地内に、使用済みLIBなどから銅、ニッケル、コバルト、リチウムを回収するリサイクルプラントを建設することを決定しました。プラントの建設は2024年度より開始し、2026年中頃の完成を予定しており、設備能力(原料処理量)はリチウムイオン電池セル換算で年間約1万トンを計画しています。
今後予想される使用済みLIBの発生量増加への対応や、2023年8月に発効された欧州電池規則で定められるメタル回収率・リサイクル材含有率への対応を見据えた設計としています。また、CO2発生量を抑えるための独自技術を織り込んでおり、カーボンフットプリント低減に向けてさらなる技術開発・最適化を進めています。
加えてプラントの建設に併せて、使用済みLIBリサイクルのサプライチェーン構築に向けたパートナーシップ協定を、主要リサイクル事業者各社と締結しました。これを契機に、各社と協力しながら使用済みLIB集荷体制に関する検討を加速していきます。
今後も当社はLIBリサイクルシステム確立に向けた取り組みを推進し、持続可能な循環型社会の実現に貢献していきます。
■ 再資源化の流れ
前処理=熱処理等による無害化処理および破砕・選別
銅のリサイクル
GRI 301-2
当社グループでは、銅系、貴金属系のスクラップ類を市中から調達しています。また使用済みプリント基板などの調達も行い、有価金属や貴金属を回収しています。これらの調達物のうち、銅を含むものを総称して銅系二次原料と定義しています。これらの原料を、自熔炉または転炉で余剰となっている熱を利用して熔解することで銅を回収します。回収した銅の合計量を銅リサイクル処理量と呼び、2030年には電気銅生産量46万トンに対するリサイクル率30%に相当する14万トン/年(銅量)の達成を目指してプロセス改善及び新規設備の導入検討に取り組んでいます。2024年度の銅系二次原料からの電気銅の生産量は約10.4万トンで、生産量に占める比率が23.4%となり、前年度(20.2%)より大幅な増加となりました。
製鋼煙灰からの亜鉛回収
(株)四阪製錬所では、鉄鋼メーカーの電気炉製鉄で発生する製鋼煙灰を主原料として、コークス等を用いて還元焙焼した後、揮発回収した亜鉛を含むダストを湿式精製・加熱乾燥により不純物を除去して、亜鉛(粗酸化亜鉛)を回収しています。今後、鉄鋼メーカーではGHG排出量削減を目的とした電気炉製鉄への転換が予想されており、それに伴い製鋼煙灰発生量が増加します。これを受けて、2030年に、製鋼煙灰リサイクル処理量12万トン/年を目指してプロセス改善に取り組んでいます。
貴金属の回収
全国各地から集荷した廃家電、廃電子部品、およびそれらの製造工程で発生した金・銀・銅・パラジウムなどの有価金属を高濃度に含有する廃電子基板などのE-スクラップなどを原料として、貴金属(金、銀、白金など)の回収・再生を行っています。
集荷された原料は、大口電子(株)で貴金属を含む部分と含まない部分に分別のうえ、組成などに応じて乾式または湿式プロセスで濃縮を行い、東予工場に輸送します。東予工場ではこの濃縮原料を他の銅・貴金属原料と同時に製錬・精製し、高品位の貴金属に再生しています。
■ 貴金属の回収フロー

スラグの活用
銅製錬所である東予工場では、その製錬過程から銅スラグを副産物として産出しています。その主な用途は、全体の8割が国内外のセメント向けです。銅スラグ中には約40%の鉄が含まれ、セメントの鉄源として広く有効利用されています。
ステンレスの原料となるフェロニッケルを製造する(株)日向製錬所で副産物として産出されるフェロニッケルスラグの主な用途は港湾・土木工事用です。