カーボンニュートラル社会への貢献

気候変動による財務関連情報開示
(TCFDに基づく開示)

GRI 3-3

当社グループは2020年2月、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures: TCFD)へ賛同しました。TCFDは、気候変動がもたらす「リスク」および「機会」の財務的影響について、企業による把握・開示を支援するための提言を公表しています。当社グループは、このTCFD提言が示す気候関連財務情報開示における中核的要素に沿った開示を行っています。

ガバナンス

気候変動を含むサステナビリティに関する当社グループの重要課題の特定と、重要課題に応じた定量的で測定可能なKPIの設定は、経営層による議論を経て取締役会で決議します。当社グループの気候変動リスク・機会と戦略に関しては、中期経営計画、年度予算、KPIおよび目標などに反映され、取締役会で決議されます。定期的に開催されるカーボンニュートラル推進委員会で管理、審議された当社グループの気候変動に関する課題への取り組み、KPIおよび目標に対するパフォーマンスなどは、社長を委員長とするサステナビリティ委員会でレビューされ、その概要は取締役会で報告されます。

戦略

事業、戦略、財務に重大な影響を及ぼす短期・中期・長期の気候変動リスク・機会は、規制、技術、市場の変化、自然災害などの当社グループを取り巻く外部環境において想定されうる様々な気候変動シナリオに基づいて抽出され、製品・サービス、研究開発投資、操業、GHG排出緩和策・適応策などの分野の事業、戦略への影響の検討を行います。その結果を踏まえて当社グループの気候変動リスク・機会に対する戦略は、3年ごとの中期経営計画に反映されます。また、これらの戦略は、カーボンニュートラル推進委員会で議論され、サステナビリティ委員会にてレビューされます。

気候変動シナリオ分析

GRI 201-2

当社グループは、気候変動が中長期的に当社グループの事業に及ぼす影響を把握し、対策を検討・準備するため2021年度より1.5℃、4℃の二つのシナリオ分析を実施しています。
2024年度は気候変動シナリオ分析をもとに、中期経営計画2027の策定と「2030年のありたい姿」の見直しを行いました。
2025年度は、前回のシナリオ分析からこれまでの社会情勢の変化等を踏まえ、気候変動シナリオ分析の更新に向けて準備を進めます。

1.5℃シナリオ

厳しい気候変動対策を取り、産業革命時期比で今世紀末の気温上昇を1.5℃未満に抑えるシナリオ

  • 炭素税負担の増大、CO2排出規制の強化
  • サーキュラーエコノミー規制の強化
  • 顧客・消費者による低炭素・脱炭素製品への要求の高まり
  • 鉱物資源開発競争の激化
  • 電気自動車・燃料電池車の普及拡大
  • 電化需要の拡大・再エネ主力電源化
  • デジタル化の進展
参照シナリオ
  • IEA World Energy Outlook(2022年)
  • IEA Global EV Outlook(2022年)
  • IPCC 1.5℃特別報告書(2018年)
  • 経済産業省
    第6次エネルギー基本計画(2021年)
  • 内閣官房他
    2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 等

4℃シナリオ

現状を上回る追加的な気候変動対策を取らず、産業革命時期比で今世紀末の気温が4℃程度上昇するシナリオ

  • 海面上昇・気温・海水温の上昇
  • 20年、100年想定の熱波、豪雨、大型台風、干ばつ等の異常気象、激甚災害の増加
参照シナリオ
  • IPCC
    第6次評価報告書統合報告書(2023年)
  • IPCC
    第6次評価報告書第2作業部会報告書(2022年)
図:気候変動シナリオ分析結果

気候変動シナリオ分析結果(PDF:2.8MB)

リスク管理

シナリオ分析により特定された気候変動リスクは、カーボンニュートラル推進委員会で監視測定し、必要に応じて是正措置や戦略の見直しを行い、サステナビリティ委員会にてレビューされます。また、気候変動リスクは、当社グループのリスクマネジメントシステムおよびリスクマネジメント分科会にて、労働災害、環境汚染、品質不良、法令違反などのその他の個別リスクへの影響を考慮したうえで、管理されています。

指標と目標

当社グループでは、2050年までにGHG排出量ネットゼロを目標に掲げています。そして、2050年カーボンニュートラル実現に向けたロードマップを策定し、2030年度におけるGHG排出量を2015年度比38%以上削減することを中期目標として掲げています。また、当社グループが生産する車載用二次電池正極材料や近赤外線吸収材料の供給を通じた社会全体のGHG排出量削減への貢献についてもKPIと目標を定め、取り組みを推進しています。

KPIと実績

  1. GHG排出量
    《スコープ1、2》
    2030年度目標:2015年度比38%削減(内訳:国内50%、海外24%)
    2024年度実績:2015年度比27%削減(GHG排出量:2,356kt-CO2
    《スコープ3》
    2030年度目標:現状の把握と目標設定:2025年度末
    2024年度実績:カテゴリー1の主要サプライヤへのアンケート実施
  2. 低炭素製錬技術の開発
    • 2030年度目標:ニッケル酸化鉱の水素還元製錬技術の開発
      2024年度実績:還元挙動の理解を深めるラボスケール試験を計画通り実施
    • 2030年度目標:リチウム直接回収技術の開発
      2024年度実績:吸着剤の品質改善に取り組み耐久性を向上
  3. 低炭素貢献製品供給によるGHG削減貢献量
    2030年度目標:110万t-CO2
    2024年度実績:100万t-CO2
  4. 低炭素貢献製品の開発と供給
    • 2030年度目標:水素製造触媒材料の開発
      2024年度実績:計画通りに開発に着手
    • 2030年度目標:全固体電池用正極材の開発
      2024年度実績:おおむね計画通りに開発が進捗