化学物質の管理と削減
化学物質の管理の考え方
当社グループでは、化学品を取り扱う機会が多いため、部門管轄のもと、すべての事業場において環境マネジメントシステムの中で化学物質管理体制を整備しています。例えば、事業場で新たな化学品を取り扱おうとする場合には、危険有害性情報、法令等の適用情報などを事前に調査し、事業場の会議体での審議を経て採用を決めるようにしており、事業場からの事前の相談や確認には事業本部と安全環境部で応じています。
また、法的義務の有無に関わらず、お客様や当社グループ内の他の事業場へ譲渡提供するすべての化学品を対象に、安全に取り扱うための情報を、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GHS)※1に準拠した安全データシート(SDS)※2の交付にて伝達することとしています。新規材料の開発においては、最終製品に適用される国内外の規制や、製造工程における環境影響など、含有物質の有害性を考慮のうえ、開発テーマの審査を行い、お客様に安心して使っていただける材料の開発に努めています。
そして、大気・水域への排出については大気汚染・水質汚濁に係る法規制を遵守し、さらに化学物質の排出量を削減していくために、事業場により個別に目標を立てて取り組んでいます。2024年度も各事業場にて有害物質排出量低減目標に応じた対応を実施しました。
- ※1The Globally Harmonized System of Classification and Labeling of Chemicals(GHS):世界的に統一されたルールに従って、化学品を危険有害性の種類と程度により分類し、ラベルで表示したり、SDSを提供したりするシステム
- ※2Safety Data Sheet(SDS):化学品について、化学物質・製品名・供給者・危険有害性・安全上の予防措置・緊急時対応などに関する情報を記載する文書
大気への排出※
GRI 305-7
2024年度のSOx排出量は前年度比で約14%減少しました。主な要因は(株)日向製錬所の生産調整による原料処理量の減少や、コーラルベイニッケル(CBNC)で使用した石炭中の硫黄(S)品位低下によるものです。NOx排出量については、東予工場でC重油の使用量が増加した影響で一部増加が見られましたが、グループ全体では前年度とほぼ同じ水準となりました。ばいじん排出量は前年度比で約40%増加しました。これは、CBNCでの高負荷操業に伴う排ガス量の増加や、ボイラー排ガス中の濃度上昇、さらにタガニートHPALで発生した電気集塵機のトラブルなどが主な要因です。
各排出量は、ばい煙の測定結果に基づいて計算されています
水域への排出
GRI 303-2/303-3/303-4
当社グループの多くの事業場は瀬戸内海沿岸に立地しているため、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づき、COD※、窒素およびリンについて総量規制を受けています。また、排水については水質汚濁防止法の排水基準等を遵守しており、違反事例はありません。
- ※COD(化学的酸素要求量):海域への排出水を対象とし、河川に排出するもので閉鎖海域へ流出するものを含みます
- ※BOD(生物化学的酸素要求量):河川への排出水を対象とし、閉鎖海域へ流入するものを除きます
化学物質の排出管理※1
GRI 305-6
2024年度の国内PRTR制度に基づく化学物質の排出量/移動量の概要は次の通りです。当社グループの届出対象事業場数は24(2023年度23)、物質数は45(同44)でした。総排出移動量(排出量+移動量)は2,450トンで、2023年度比で約7%減少しました。これは主に、(株)四阪製錬所で副生する産業廃棄物である含鉄クリンカー※2の発生量が減少し、それに伴いマンガンの事業所外への移動量が減少したことによるものです。一方、排出量については、菱刈鉱山の坑廃水に含まれるホウ素の濃度の上昇などにより水域への排出量が約12%増加し、全体の排出量も前年度比で約11%増加しました。なお、オゾン層破壊物質の排出はありませんでした。
- ※1事業所外移動量には、当社グループの関係会社に産業廃棄物処理委託契約を締結して排出し、原料としてリサイクル処理されるものに含まれているため実質的には当社グループ外に排出されていないもの(ニッケル化合物、コバルトおよびその化合物など)が一部含まれます
- ※2含鉄クリンカー:電炉ダスト処理における亜鉛回収後の残渣で、販売可能なものを「含鉄ペレット」、最終処分されるものを「含鉄クリンカー」と呼んでいます