地球環境保全

自然関連リスクと機会の特定・対応

2025年4月1日付で「住友金属鉱山グループ自然に関する方針」を策定し、ガバナンスと推進体制、原則およびレビューとレポートに関する指針を明示しました。この中では、自然に関する依存・インパクト・リスク・機会の評価および特定、優先地域における実質的な自然損失ゼロ(ノーネットロス)への取り組み、バリューチェーンや関連する地域の生態系(ランドスケープ)におけるステークホルダーとの協働など自然に関する原則を定めています。そして、当社グループの事業活動が自然に与えるマイナスインパクトを回避・最小化し、回復・保全に取り組むことで、社会の持続的発展へ貢献することを約束しています。
また、2030年のありたい姿に「ネイチャーポジティブな未来へ貢献する企業」を掲げ、2026年度には当社グループ事業の優先地域での自然関連リスクと機会の特定とその対応などを開示します。
2024年1月17日、ICMMから「Nature Position Statement」が発表されました。ICMMの会員企業である当社は、コミットメント(遵守事項)として、2026年までに優先地域での事業に関する自然への依存と影響の診断およびリスクと機会の評価を行うとともに、2030年までに重要なバリューチェーンのカテゴリおよび課題の特定ならびに重要側面のパフォーマンス目標および目的の策定を行います。
2023年度は、事業拠点において以前から実施している植林、生物多様性保護活動を継続しつつ、自然への取り組みや関連情報開示への対応を検討するためのワーキンググループを環境保全部会(現・地球環境保全部会)の下に設置しました。
2024年度には当社グループ事業の自然への依存と影響について、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures:TNFD)でも推奨されているツールであるENCORE、Integrated Biodiversity Assessment Tool (IBAT)、Global Forest Watch(GFW)およびWRI Aqueduct - Water Risk Atlasを用いて分析を進めています。

工場建設・操業時における環境負荷の低減

フィリピンのコーラルベイニッケル(CBNC)およびタガニートHPAL(THPAL)のプラント建設においては、計画段階からフィリピン共和国政府や自治体、地元住民と十分な話し合いを持ち、使用する硫酸やメタノールを受け入れるための桟橋をサンゴ礁を迂回して設置し、排水口の位置もサンゴ礁の保護に配慮するなど、環境負荷の少ないプラント建設を実施しました。
両社ともに環境管理活動の部署として、EMO(Environmental Management Office)を設けています。EMOによる環境調査、および環境天然資源省、自治体、NGOなどで構成されるチームにより、定期的に水質や大気、動植物に対するサンプル調査を実施しています。EMOは、企業や事業所において環境管理活動を専門的に担当する部署です。主な役割は、事業活動が環境に与える影響を監視・評価し、環境保全や法令遵守のための施策を計画・実施・管理することです。こうした環境モニタリングを通じて、工場の建設・操業が生態系に重大な影響を与えていないことを確認し、排水などによる環境負荷を最小限に抑えています。
これまでの取り組みにより環境天然資源省からフィリピンの鉱物産業界にとって最も栄誉ある鉱物産業環境大統領賞(PMIEA)をCBNCは10回、THPALは3回受賞しています(2014~2024年)。

車載用二次電池の材料(正極材)を2025年1月に商業生産開始した新居浜工場の建設においては2025年1月に、愛媛県・新居浜市と連携し協議を重ね、法令順守とともに環境負荷低減の工法を採用しました。具体的には新居浜工場は地下水が豊富な臨海埋立地に位置していることから杭打ち掘削ではケーシング工法を採用し、地下水汚染への影響の低減を行いました。また工事排水、残土もすべてチェックし、適切な方法で排出しました。
工場そのもののコンセプトとして低エネルギーとGHG削減をあげ、主要建屋3棟に計10,000m2(1,000kW)以上の太陽光発電を設置する他、エネルギー源としてもCO2排出量の比較的低いLNGガスを使用しています。また、工場内のフォークリフト・トラックの輸送エネルギーを削減すべく、輸送距離が最短となるレイアウトとし、工場間の輸送はすべて空気流送で行うこととしました。

水リスクへの対応

GRI 303-1

水は地域の共有資源であり、周辺住民の生活や地域社会と密接に関わっているとともに、周囲の生態系にも影響を及ぼします。当社グループは、「住友金属鉱山グループの水に関する方針」のもと、WWF Water Risk FilterやWRI Aqueductなどのツールに加え、各事業場の水利用や周辺環境への影響も考慮して水リスクを特定し、その低減に努めるとともに、利用する水域の地域社会や環境に配慮し、限りある水資源の有効利用に責任を持って取り組んでいます。
例えば、フィリピン・パラワン島にあるCBNCでは、乾季に水不足になりやすい地域にあることから、尾鉱ダムに貯まった上澄み水をリサイクル施設で処理し、製錬工程で再利用するほか、工業用水としてサプライヤーである石灰スラリー製造会社へ供給するなど、水資源の有効利用に取り組んでいます。また、水に関する地域社会への貢献活動として、上水道設備の提供とその維持管理、必要に応じた飲料水のタンクローリーによる給水活動も継続しています。さらに、同社の環境管理活動部門であるEMOは、地元行政、NGOなどとともにチームを構成するなど、工場の操業が周辺の水域に重大な影響を与えていないか定期的に水質検査を実施し、モニタリングを継続しています。
なお、当社グループは、CDP水セキュリティ質問書に毎年回答するとともに、「水に関する方針」に基づいた取り組みを社内外へ発信しています。

取り組み事例

  • 取水源別取水量の把握による過剰取水の防止
  • リサイクル水・リユース水の使用促進による取水量および排水量の削減
  • 水バランスの把握と使用量の最適化による水の有効利用促進
  • 排水中の有害化学物質の水域への排出量削減による環境負荷の低減
  • 事業場周辺における水生生物モニタリング調査による生物多様性保全の推進
  • 水へのアクセスが困難な地域におけるインフラ整備の推進