人材育成の考え方

従業員一人ひとりの自律的な成長が、当社グループ全体の持続的な成長につながると考えています。新たなビジネスモデルの構築や変化する事業環境に対応するため、従業員一人ひとりに能力向上の機会を提供し、成長戦略を確実に実行できる人材を育成しています。
従業員の成長の基本は、人材育成を意識した適切な配置とともに、日常業務を通じて計画的・継続的に行われる実践的教育OJT(On-the-Job Training)と従業員個々人の自己啓発にあると考えています。OJTでは、仕事の知識やスキルを身に付けるだけでなく、業務を通じた人としての成長も促しています。OFF-JTでは、人事管理区分ごとに各種研修や講習会、eラーニング等の育成体系を構築し、従業員の自律的な学びを促進しています。
また、上司による部下の成長に対する適切な関与が重要であるとの考えから、上司が部下のやる気・意欲を積極的に支援するよう取り組んでいます。目標管理制度では、従業員一人ひとりがキャリアについて自律的に考え、やりがいを持って仕事に取り組めるよう、中長期的な取り組みやチャレンジングな姿勢を評価するとともに、異動申告制度を含めたキャリア形成支援を積極的に行っています。また、上司と部下間のコミュニケーションの質を上げ、一人ひとりの能力を引き出すために、1on1ミーティングを導入し順次展開しています。
当社では、人事部門に加えて、部門別・職掌別にも人材育成を行っています。職掌別に、育成責任者を明確にし、人材の育成と活用(配置)を全社横断的に行っています。

当社では、育成・活用(配置)の目的・基本的考え方の違いから、従業員の役割に応じて、「総合職」ならびに「基幹職」の人事管理区分を設け、異なる人材育成体系を整備しており、各人事制度と連関させた育成・配置を行っています

研修体系

人事管理区分・階層・職能・個人別に必要とされる能力の向上を図るための研修体系を構築しています。

■ 全社人材育成体系
図:全社人材育成体系

総合職階層別教育

職務等級区分ごとに求められる職務・職責を担い、成果を発揮できるよう、職場をマネジメントする職務・職責や事業責任者に該当する職務等級区分に配置した際に実施する「等級区分研修」と、事前に受講することが必要な「事前受講カリキュラム」の2種類で構成しています。

等級区分研修 住友ならびに当社ゆかりの施設を訪問し、「住友の事業精神」や当社の歴史を体感することで、当社従業員としての自覚と責任を再認識する研修を行っています。
事前受講
カリキュラム
上位の職務等級区分の職務・職責を担うために求められる知識・スキル(社内知識や課題解決、マネジメントスキル等)を事前に学ぶためのeラーニングを整備しています。自身のキャリアを自律的に考え、求められる知識・能力・スキルを事前に学び・身に付けることで職務遂行能力の向上を図るとともに、求められる職務・職責を果たせることを期待しています。

総合職3年育成体系

新入社員としての育成期間を、企業人としての基盤が形成される入社後3年間としています。入社3年後の姿を想定させ、3年間の目標を明確に与えながら自己研鑽を促すとともに、一定期間ごとに研修プログラムを実施することにより、個々人の成長を促進しています。

新入社員研修 社会人の基礎を身に付けることに加え、当社従業員としての自覚・責任を認識し、自身の役割や将来像を描くことを目的とし、座学やグループワーク、事業所・当社ゆかりの施設への訪問などのカリキュラムを中心に、約1カ月にわたり行っています。併せて、グローバル人材の育成を目的に、語学研修等の海外プログラムを実施しています。
入社2年次研修 入社後2年間を振り返り、自身の立場や期待されている役割を再確認し、今後のキャリアイメージを描く機会を提供することで、業務に対するモチベーションや組織に対するエンゲージメントの向上に努めています。
入社3年目修了
小論文発表会
3年育成体系の仕上げとして、自身の役割の再認識と中長期的なキャリア展望の整理を狙いとした小論文発表会を行っています。入社後3年間で取り組んだ課題解決や業務、4年目以降10年目までの展望について整理することで、自律的なキャリア形成の促進を図っています。

次世代経営層育成

実務を通じた経験に加えて、計画的な育成により人材プールを拡充していくことが重要であると考えています。そのため、対象層ごとに複数の選抜型プログラム(ミドルマネジメントプログラム、次世代経営幹部育成研修、役員塾など)を実施し次世代経営層の育成を行っています。また、複数の社外プログラムへの派遣も積極的に行っており、社外の次世代経営人材との他流試合を通じ、社内だけでは得られない視座の獲得を図っています。

役員塾 役員塾は、執行役員と塾生がお互いに刺激を受け自ら育ち思索する場として、2014年に発足しました。執行役員が務める塾長・副塾長と若手から中堅社員8~10名の塾生により構成された各塾は、自主的な運営を行い、年1回報告を行っています。資源、金属、材料・研究開発、設備技術、人事、経理、営業など職掌ごとの塾が、毎年当社にとって重要な課題となるテーマを独自に決め、考え抜く力を強化し、共に学び、職場で実践活用することを目指して活動しています。
次世代経営幹部
育成研修
次世代経営幹部育成研修は、近い将来当社を牽引する40歳代後半のリーダー人材を選抜し、経営感覚を身に付けるための研修として2011年度から実施しています。変化・成長の出発点に立たせ、世界的かつ急速な環境変化の中で企業経営を行っていくために必要な知識の習得と思考力を訓練するとともに、覚悟と意欲の醸成を狙いとし、約9カ月間にわたる実践的プログラムを実施しています。
ミドルマネジメント
プログラム(MMP)
MMPは、今後組織を牽引していくことが期待される30歳代から40歳代前半までの人材を選抜し、高い視座を身に付けるためのプログラムとして2008年度から実施しています。当社経営陣が講師となり、約5カ月間にわたり2030年のありたい姿を達成するための重要課題について討議を行うこと等を通し、次世代を担うミドル層の底上げを図っています。

自己啓発支援・推奨

従業員自らのやる気・意欲を積極的に支援するため、オンライン動画学習、eラーニング、通信教育、外国語講座(英語・スペイン語・中国語)など様々なプログラムを提供し、従業員が自律的に学べる体制を整えています。総合職全員を対象としたオンライン動画学習プログラムでは、上位の等級区分に求められる知識・スキル(課題解決力やマネジメントスキル、経営基礎知識)に加え、当社の事業戦略、安全衛生、ダイバーシティ、労務管理などに関する知識習得を通じ、従業員の自律的な学びを促進しています。また、2023年度より、全社員を対象とし業務上必要もしくは業務と関連性の深い資格保持者の確保と高度な専門能力を持つ社員の育成を目的とした「資格取得祝金」や選任・届出による対外的な責任を負う社員への動機付けを図るための「選任届出手当」などを支給しています。

成長促進、コミュニケーション、人材ネットワークづくり

1on1ミーティング 上司と部下間のコミュニケーションの質を上げ、一人ひとりの能力を引き出し、成果を上げる組織を構築することを目的に、2021年度より1on1ミーティングを導入しています。1on1ミーティングは、部下の能力を引き出し、自律的な成長を促進するために上司と部下が定期的に対話をする場であり、部下が主体となった部下のためのものです。社内での展開にあたっては、上司・部下それぞれを対象に心理的安全性や1on1ミーティングを実施する目的・意義やスキル・マインドの周知徹底を図っています。
DXサロン 社員が「デジタル」への興味を持つことに加えて、従来の仕事のやり方を見直すきっかけ作りを目的に、2カ月に1回「DXサロン」を開催しています。ここはデジタルを使った業務効率化に取り組んだ社員が、その背景と内容、効果を共有する場となっています。対面で気軽に情報交換を行うことで、最近では「自分もデジタルを使って仕事を楽にしたい」という参加者の声も増えてきました。
本社ACROSS 本社オフィスリニューアルの目的の一つである「コミュニケーション活性化」を推進するイベントとして「ACROSS」を毎月1回開催しています。「ACROSS」では、社員がお互いの仕事内容、目標の相互理解を促進するため、各事業の概要やトピックス、DXへの取り組み事例の紹介等を行っています。

Accelerate Co-creation Roundly Over the Sections in Sumitomo metal mining「部門を超えた共創を加速させる」の造語

キャリアデザイン研修・キャリア&ライフプラン研修

「従業員が誇り・やりがい・働く喜びを持てる企業」であるためには、従業員が自律的にキャリアを描き、いきいきと働き続けられることが大切だと考えています。そのために、入社2年次研修を起点に、35歳、43歳、50歳、58歳時点でキャリア研修を実施し、年代特有のキャリア課題を踏まえながら、自身のキャリアの振り返りを通して、今後のキャリア目標や行動計画を明確化する機会を設けています。

JCO資料館研修

JCO臨界事故は、当社グループ従業員として忘れてはならない教訓として受け継いでいく義務と責任があるものと考えています。このため、事故にまつわる事実に直接触れることのできる体験型の施設として2010年10月JCO資料館を設立し、二度とあのような事故を起こさないため、資料や音声、映像などを通して、事故が起きた直接原因や当時のリスク管理等について学んでいます。あらゆる研修に組み込むことによって当社グループ従業員全員が一度はJCO資料館研修を受講するよう努めています。2023年3月末時点での受講率は、当社社員:92%、関係会社社員:78%となっています。

人権研修

当社は経営理念にある通り、人間尊重を基本とし、その尊厳と価値を認め、明るく活力ある企業を目指しており、毎年12月を人権月間として当社グループ全体で人権研修に取り組んでいます。異なる属性や背景、経験などの違いを認め、互いに刺激し合い成長していくことができる職場づくり、つまりダイバーシティを実現するため、無意識のうちに思い込みや先入観、固定観念にとらわれることがダイバーシティの推進の阻害要因となり、ハラスメントの原因になり得ることから、2022年度は「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」に関する教育を各職場で行いました。