人材育成の考え方

当社では、成長戦略実現のカギは人材であると考え、中長期的な視点で戦略実行に必要となる人材の採用に取り組んでいます。中長期的な育成が求められる領域や職掌には、少数精鋭の採用方針のもとに新卒採用した人材の配置を行い、大型プロジェクトの推進や事業拡大戦略のスピーディな実行などに必要なポストについては、経験・専門性を持った人材を社外から積極的に採用しています。
このように採用した従業員一人ひとりの自律的な成長が、当社グループ全体の持続的な成長につながると考えています。新たなビジネスモデルの構築や変化する事業環境に対応するため、従業員一人ひとりに能力向上の機会を提供し、成長戦略を確実に実行できる人材を育成しています。
従業員の成長の基本は、人材育成を意識した適切な配置とともに、日常業務を通じて計画的・継続的に行われる実践的OJT(On-the-Job Training)と従業員個々人の自己啓発にあると考えています。OJTでは、知識やスキルを身に付けるだけでなく、人としての成長も促しています。OFF-JTでは、人事管理区分ごとに各種研修や講習会、オンライン動画学習、eラーニング等の育成体系を構築し、従業員の自律的な学びを促進しています。
また、上司による部下の成長への関与が重要であると考え、上司が部下のやる気・意欲を積極的に支援するよう取り組んでいます。個人の成長と会社の持続的発展の両立を目的に導入している目標管理制度においては、従業員一人ひとりがキャリアについて自律的に考え、やりがいを持って仕事に取り組めるよう、中長期的な取り組みやチャレンジングな姿勢を評価するとともに、異動申告などのキャリア形成支援を行っています。社員の業績評価においては、社員の職務・職責、役割に応じて評価点の配分を変えることで評価の際に重視する点を明確にしています。評価を共有する場として、年度終了後にフィードバック面談を実施していることに加え、上司と部下のコミュニケーションの質を高め、一人ひとりの能力を引き出すために、1on1ミーティングを展開しています。
当社では、人事部門に加えて、部門別・職掌別にも人材育成を行っています。職掌別に、育成責任者を明確にし、人材の育成と活用(配置)を全社横断的に行っています。

当社では、育成・活用(配置)の目的・基本的考え方の違いから、従業員の役割に応じて、「総合職」ならびに「基幹職」の人事管理区分を設け、異なる人材育成体系を整備しています

人材育成に関する中期目標

2030年のありたい姿実現に向け、人材育成に関する中期目標として「1on1ミーティング実施率」ならびに「自己啓発制度(オンライン学習ツール)活用率」を掲げています。
上司と部下の定期的な対話を通じて、一人ひとりのやる気や可能性を引き出し、成長をさらに促進することを目的に「1on1ミーティング」を展開しており、2030年度の実施率が100%となるよう取り組みを進めています。
また、2023年7月の総合職人事制度改正に合わせ、従業員一人ひとりが学び成長し続ける企業文化の創出を目的に、全総合職社員を対象にオンライン学習ツールの導入を行い、2030年度の活用率が60%となるよう利用促進を図っています。

研修体系

人事管理区分・階層・個人別に必要とされる能力の向上を図るための研修体系を構築しています。

■ 全社人材育成体系
図:全社人材育成体系

総合職階層別教育

職務等級区分ごとに求められる職務・職責を担い、成果を発揮できるよう、職場をマネジメントする職務・職責や事業責任者に該当する職務等級区分に配置した際に実施する「等級区分研修」と、事前に受講することが必要な「事前受講カリキュラム」の2種類で構成しています。

等級区分研修 住友ならびに当社ゆかりの施設を訪問し、「住友の事業精神」や当社の歴史を体感することで、当社従業員としての自覚と責任を再認識する研修を行っています。
事前受講
カリキュラム
上位の職務等級区分の職務・職責を担うために求められる知識・スキル(社内知識や課題解決、マネジメントスキル等)を事前に学ぶためのeラーニングを整備しています。キャリアを自律的に考え、求められる知識・能力・スキルを事前に学び・身に付けることで職務遂行能力の向上を図り、業務を通じて実践することを期待しています。

総合職3年育成体系

新入社員としての育成期間を、企業人としての基盤が形成される入社後3年間としています。入社3年後の姿を想定させ自己研鑽を促すとともに、3年間の目標を明確に与えながら一定期間ごとに研修プログラムを実施することにより、新入社員の成長を促進しています。

新入社員導入研修 社会人の基礎を身に付けることに加え、当社従業員としての自覚・責任を認識することを目的に、座学やグループワーク、事業所・当社ゆかりの施設への訪問などのカリキュラムを約1カ月にわたり行っています。併せて、グローバル人材の育成を目的に、海外語学研修等を実施しています。
2023年度受講率:100%
入社2年次研修 入社後2年間を振り返り、自身の立場や期待されている役割を再確認し、今後のキャリアイメージを描く機会を提供することで、業務に対するモチベーションや組織に対するエンゲージメントの向上に努めています。
2023年度受講率:93.2%
入社3年目修了
小論文発表会
3年育成体系の仕上げとして、役割の再認識と中長期的なキャリア展望の整理を狙いとした小論文発表会を行っています。入社後3年間で取り組んだ業務や課題解決、10年目までのキャリア展望について整理することで、自律的なキャリア形成を促進しています。
2023年度参加率:92.2%

次世代経営層育成

計画的な育成により、次世代経営層の人材プールを拡充していくことが重要であると考えています。そのため、対象層ごとに複数の選抜型プログラム(ミドルマネジメントプログラム、次世代経営幹部育成研修、役員塾など)を実施し、育成を行っています。また、複数の社外プログラムへの派遣も積極的に行っており、社外の次世代経営人材との他流試合を通じ、社内だけでは得られない視座の獲得を図っています。

役員塾 役員塾は、執行役員と塾生がお互いに刺激を受け、自ら育ち思索する場として2014年に発足しました。執行役員が塾長・副塾長を務め、若手から中堅社員の塾生により構成された各塾は、自主的な運営を行っています。資源、金属、材料・研究開発、設備技術、人事、経理、営業などの職掌ごとの塾が、当社にとって重要な課題となるテーマを決め、共に学び、職場で実践することを目指して活動しています。
次世代経営幹部
育成研修
次世代経営幹部育成研修は、近い将来、当社を牽引するリーダー人材を選抜し、経営の定石を学ばせるための研修として2011年度から実施しています。受講生を変化・成長の出発点に立たせ、覚悟と意欲を醸成するとともに、企業経営を行っていくために必要な知識の習得と思考力の訓練を狙いとし、約8カ月間にわたる実践的プログラムを実施しています。
ミドルマネジメント
プログラム(MMP)
MMPは、今後組織を牽引していくことが期待される人材を選抜し、高い視座を身に付けさせるためのプログラムとして2008年度から実施しています。当社経営陣が講師となり、2030年のありたい姿を達成するための重要課題について約5カ月間にわたる討議を行うことを通し、次世代を担うミドル層の底上げを図っています。

自己啓発支援・推奨

従業員の自律的な学びを積極的に支援するため、オンライン動画学習、eラーニング、通信教育、外国語講座(英語・スペイン語・中国語)など様々なプログラムを提供しています。総合職全員を対象としたオンライン動画学習プログラムでは、知識・スキル(課題解決力やマネジメントスキル、経営基礎知識)に加え、当社の事業戦略、安全衛生、ダイバーシティ、労務管理などに関する講座を提供しています。また、2023年度より、全社員を対象とし業務上必要もしくは業務と関連性の深い資格保持者の確保と高度な専門能力を持つ社員の育成を目的とした「資格取得祝金」や選任・届出による対外的な責任を負う社員への動機付けを図るための「選任届出手当」などを支給しています。

成長促進、コミュニケーション、人材ネットワークづくり

人材育成に加え、従業員一人ひとりの成長促進やコミュニケーション活性化、人材ネットワークづくりを目的に様々な施策を展開しています。

1on1ミーティング 上司と部下間のコミュニケーションの質を上げ、一人ひとりの能力を引き出し、成果を上げる組織を構築することを目的に1on1ミーティングを導入しています。社内での展開にあたっては、上司・部下それぞれを対象に、実施目的・狙いに加え、心理的安全性に関する研修を実施しています。
本社ACROSS 本社オフィスリニューアルの目的の一つである「コミュニケーション活性化」を推進するイベントとして「ACROSS」を毎月1回開催しています。「ACROSS」では、社員がお互いの仕事内容、目標の相互理解を促進するため、各事業の概要やトピックス、DXへの取り組み事例の紹介等を行っています。

Accelerate Co-creation Roundly Over the Sections in Sumitomo metal mining「部門を超えた共創を加速させる」の造語

キャリアプラン研修

「すべての従業員が活き活きと働く企業」であるためには、従業員が自律的にキャリアを描き、65歳まで意欲的に働き続けることが大切だと考えています。そのために、入社2年次を起点に、35歳、43歳、50歳、58歳時点でキャリアプラン研修を実施し、今後のキャリア目標や行動計画を明確化する機会を設けています。2023年度の受講率は88.3%でした。

JCO資料館研修

当社グループ従業員には、JCO臨界事故を、忘れてはならない教訓として受け継いでいく義務と責任があるものと考えています。このため、2010年10月に、事故にまつわる事実に直接触れることのできる体験型の施設としてJCO資料館を設立し、事故が起きた直接原因や当時のリスク管理等について学んでいます。二度とあのような事故を起こさないため、社内研修にJCO資料館研修を組み込み、当社グループ従業員は全員、一度は必ず受講するよう努めています。2024年5月1日時点での受講率は、当社社員90.9%、関係会社社員85.5%となっています。

人権研修

当社は経営理念にある通り、人間尊重を基本とし、その尊厳と価値を認め、明るく活力ある企業を目指しており、毎年12月を人権月間として当社グループ全体で人権研修に取り組んでいます。異なる属性や背景、経験などの違いを認め、互いに刺激し合い成長できるダイバーシティを実現した職場づくりを目指します。無意識の思い込みや先入観、固定観念はダイバーシティ推進の阻害要因となり、ハラスメントの原因になり得ることから、2023年度は「立場に気づく(マジョリティとマイノリティ)」をテーマに、研修を各職場で行いました。