描いた「未来」を
現実のものに。
挑戦の日々が始まった。
「世界の非鉄リーダー」になる。住友金属鉱山では、掲げた長期ビジョンの実現に向けて、海外資源の権益取得に力を注いでいる。チリ共和国におけるケブラダ・ブランカ銅鉱山の開発は、その代表的なプロジェクトのひとつだ。資源メジャー企業のテック・リソーシズ社(テック社)から25%の権益を取得。ポゴ金鉱山(米国アラスカ州)を共同経営してきた長年のパートナーシップをもとに、新たな価値の創造を目指している。同プロジェクトの本社担当として、テック社との折衝やプロジェクト管理を任された稲岡は、このプロジェクトが持つ「意味」をこう話す。
「ケブラダ・ブランカは、ワールドクラスの大型銅鉱山です。世界の有望な開発案件が資源メジャーに寡占されている状況の中で、これほどの案件に主要パートナーとして参画し、プロジェクト現地にも技術者を派遣して関与するのはきわめて稀なケース。今回の開発対象である鉱床の下部にも豊富な資源量を有することから、さらなるポテンシャルも期待されています。」
同プロジェクトを成功させることができれば、長期ビジョンの実現に向けた銅生産目標に対して飛躍的な一歩を踏み出すことができる。描いた未来を現実のものとするために、住友金属鉱山は多国籍のプロジェクトチームを組織し、新たな価値創造への挑戦をスタートさせたのだった。
チリ国内の暴動に
新型コロナ、
変化の波に立ち向かえ。
ケブラダ・ブランカ鉱山は、チリ共和国の首都サンティアゴから北へ1,500km、標高4,400mに位置する。ここに大規模な選鉱場プラントと、廃棄対象となる鉱物を貯蔵・処理する尾鉱ダムを建設し、165km離れた海岸に港湾施設と、同施設へ資源を送るパイプラインを敷く。最大建設動員数が一万名を超える大規模なプロジェクトに向き合ったメンバーたちが、一様に頭を悩ませたのが「変化」への対応だ。チリ共和国内の政情不安、そして、新型コロナウイルスの猛威。度重なるトラブルによって、一度スタートした建設は、感染拡大防止のため中断。メンバーがそれぞれ担当するプロジェクト管理面でも影響を受けることとなった。
「技術面での操業リスク低減や、建設進捗状況の管理を担当しました。心がけていたのは、現場で何が起こっているのかを適切に把握し、プロジェクトに与える影響を見定めること。現地駐在者とも連携を密にして、一つでも多くの情報を入手し、刻一刻と変わるプロジェクトの現状把握に努めました。」(プロジェクト管理/山根)
「こうした事態を受けて、会計面にも大きな影響がありました。社会の動向は税金などに大きな影響を及ぼしますので、現地の状況に注視する必要があります。施設の電力契約やコストのレビューなどを任されていた経理担当と連携を強め、プロジェクト全体を見据えたフォーキャスト管理を務めました。」(稲岡)
「法務担当として、本プロジェクトにおける契約を一つひとつ詳細に詰めていく。それが、私のミッションでした。幹となる主要契約はプロジェクト開始時に締結されていても、プロジェクトが進むにつれて、枝葉となるさまざまな契約合意が必要となります。社内の意思を確かめ、テック社との意見のすり合わせていくことには苦労が伴いました。プロジェクトに関わる一部の契約が締結されるまでに、数ヶ月を要することも少なくありません。」(法務/カーメン ※編集者翻訳)
待望の建設再開。
生産開始の瞬間を
心待ちにして。
現在、同プロジェクトは万全のコロナ感染対策のもとで建設を再開。プロジェクトの設計・建設管理担当を務める立原も現地に駐在し、テック社のメンバーと共に、与えられたミッションに邁進している。
「エンジニアリング会社から提案された設備の能力は十分か。メンテナンスをするスペースはあるか。法令を遵守しているかをオーナーとして確かめる。建設が順調に進むよう進捗管理する。それが、私の役割です。建設風景はとにかく壮大のひとこと。日本で言えば、富士山から東京までをパイプでつなぐようなものですからね。」
同プロジェクトには、数々の画期的な技術が導入されている。鉱山内を走行する大型トラックの自動化による無人走行、そして1,500km離れたサンティアゴの管理センターからリアルタイムで最適な操業支援を行える、遠隔操業管理システムの導入だ。環境面にも最大限配慮し、使用される水資源は限りある地下水ではなく脱塩処理した海水を使用、電力資源はその半数が再生可能エネルギー由来となる。竹村は、それら膨大な設備の試運転計画とその実施を一手に任されている。
「このプロジェクトでは、住友金属鉱山として初となる取り組みがいくつも実施されます。脱塩装置を介した港湾~選鉱場の水供給がスムーズにいくか。遠距離リモートでの通信が途絶えてしまわないか。生産にこぎつけるまでの重要なミッションを担えることに喜びを感じています。私の正念場はまだ先ですが、今のうちから綿密な計画を立てることで、円滑にプロジェクトを進めたいと思っています。」
組織一丸となったモノづくり。
理想のチームで、
新たな価値創造に挑む。
ケブラダ・ブランカ鉱山開発プロジェクトは、まだ中盤にさしかかったところ。世界屈指の資源開発に携わることに誇りと喜びを感じながらも、メンバーたちは、さらに気を引き締めて、自らの責務に向き合っている。
「巨大プロジェクトの経験もない。スペイン語もできない。にもかかわらず、試運転チームの誰もが私をファミリーとして迎えてくれました。私たちの正念場はまだこれから。チームへの感謝を仕事で示し、共に喜び合える瞬間を迎えたいと思っています。」(竹村)
「設備の設計・検査、建設の工程管理などこれまで培ってきた技術が、しっかりと通用することがわかりました。壮大なプロジェクトに参画できていることはもちろん、チームに自分の仕事が認められたことに何よりの喜びを感じています。」(立原)
「一つひとつ、合意のサインを重ねていくたびに、住友金属鉱山が『世界の非鉄リーダー』に向けて前進しているように感じました。法務という自らのバックグラウンドを最大限に活かして、この素晴らしい会社に貢献できていることを誇りに思っています。」(カーメン ※編集者翻訳)
「ケブラダ・ブランカは、会社の未来を占う重要なプロジェクト。若手のうちからこのような大規模プロジェクトに関われることにやりがいを感じています。ここで得た知見を糧に、資源開発プロジェクトを現場で担っていけるようになりたいですね。」(山根)
「地球の裏側で展開する数千億円にも上る巨大プロジェクトに携わっている。その事実にかつてない高揚感とやりがいを感じています。まずは、このプロジェクトを予定通りに生産開始へと導いていくこと。チーム一丸で全力を尽くし、完遂の暁には『ワールドクラスの銅鉱山を立ち上げたんだ!』と胸を張りたいですね。」(稲岡)