文殊院旨意書 もんじゅいんしいがき
住友の事業精神
わたしたち住友金属鉱山グループのルーツは、慶長年間に「南蛮吹き」と呼ばれる銅の精錬技術を開発した住友家初代政友の義兄蘇我理右衛門にまでさかのぼります。以後住友家は、銅製錬業、鉱山業などの事業をとおして発展を遂げました。
一方住友家初代政友は商人としての心得を説いた「文殊院旨意書(もんじゅいんしいがき)」を残しました。そして、その教えは、「住友の事業精神」へと深化を遂げ、今も、住友家の事業を継承したわたしたち住友金属鉱山グループの精神的なバックボーンとなっています。「住友の事業精神」は次の言葉で表されています。
「住友の事業精神」は、当社事業の創業以来引き継がれてきた
事業精神であり、次の言葉で表されています。
  • 第1条
    わが住友の営業は信用を重んじ、確実を旨とし、
    もって一家の鞏固(きょうこ)隆盛を期すべし
  • 第2条
    わが住友の営業は時勢の変遷理財の得失を計り、
    弛張(しちょう)興廃することあるべしといえども、
    いやしくも浮利に趨(はし)り軽進すべからず
(昭和3年 住友合資会社社則「営業の要旨」より抜粋)

  • 南蛮吹き

    1590南蛮吹きの技術を開発し、
    事業の礎を築く

    1590年、蘇我理右衛門が、泉屋と称して京都で銅製錬・銅細工を開業。ほどなくして、粗鋼から銀を分離する「南蛮吹き」という製錬技術を開発しました。当時の日本は、銅製錬の技術が未熟で、銀を含んだままの銅を輸出していたため、そのぶん富を損失していました。しかし、この南蛮吹きの確立により、銀を回収することが可能となって泉屋は繁栄。住友の事業基盤を築くまでの発展を遂げたのです。画期的な技術を開発した蘇我理右衛門は、これを独占することなく同業者にも広く公開。その結果、日本における銅産業は加速度的に発展を遂げました。

  • 西洋技術

    1888西洋技術の導入により、
    鉱山事業の近代化を推進

    1874年、生産能力の向上を目的にフランス人鉱山技師ルイ・ラロックを別子銅山に招聘。彼が記した「別子銅山目論見書」をもとに、地下深くに眠る鉱石を掘り起こす東延斜坑の開削や、ダイナマイトによる掘削、削岩機の導入、鉄道の敷設など、西洋技術を取り入れた採鉱・運搬の近代化を推し進めました。その結果、別子銅山の出鉱量は増大。別子山中にあった製錬所も新居浜の沿岸部に移設し、洋式の銅製錬所として1888年に本格的な操業を開始しました。その後も、別子銅山鉄道が新居浜まで開通したことで、輸送能力が飛躍的に向上。製錬所の鉱石処理量も大幅に増加しました。

  • 未来洞察プロジェクト

    1960
    材料事業へ進出

    1950年代以降、貿易の自由化により日本国内の金属販売価格は大幅に低下しました。これに対し、金属を加工し、付加価値をつけて販売することで収益を確保する方針が示されました。1960年、電子材料の製造子会社として東京電子金属(株)を設立(のち1966年に本体に吸収)、予想される電子化時代に向け、非鉄金属を用いた電子材料の製造を開始しました。初期の製品はラジオ向けの高純度ゲルマニウムや、トランジスタ・IC 用合金であるアロイプリフォーム、IC 用リードフレームなどでした。金属の特性をいかした電子材料事業が当社の事業として加わったのです。

  • 東北大学協働研究部門

    1986海外銅鉱山への資本参加で、
    資源確保への動きを加速。

    1980年代、世界の銅鉱山は需要と価格の低迷に苦しんでいました。日本の産鋼業界では、海外から鉱石を輸入して製錬しており、有利な買鉱条件で安定的に鉱石を調達することが求められました。当社は、海外の銅鉱山に資本参加することで資源を確保する方針を打ち出し、1986年にアメリカのモレンシー銅鉱山への資本参加を決定。その後も1992年にチリのカンデラリア銅鉱山、1993年にオーストラリアのノースパークス銅鉱山に資本参加。資源確保と事業のグローパル展開を加速させていきます。

  • 東北大学協働研究部門

    1993MCLE法によりニッケル生産
    高い生産効率と
    コスト競争力を実現

    銅の生産を拡充する一方で、住友は1933年からニッケルの生産技術開発に着手。それまで国内での製錬ができず輸入に頼っていたニッケルの国内製錬に先鞭をつけたのです。1936年に四阪島製錬所で初めて生産に成功すると、1939年からニッケル製錬を事業化。高度経済成長期の増産を目的とした生産プロセスの変更を経て、1993年に高い生産効率とコスト競争力を誇るMCLE法※へ全面転換しました。この製法は優れた湿式製錬技術として高い評価を受け、現在も採用され続けています。

    Matte Chlorine Leaching Electrowinning(マッ卜塩素浸出電解採取)の略称。ニッケルマットおよびミックスドサルファイド(ニッケルとコパルトの混合硫化物)原料を塩紫に溶かし、電解法にて高純度ニッケルを生産する方法。

  • 東北大学協働研究部門

    2005 HPAL技術の商業化で、
    資源の有効活用を実現

    2005年、フィリピン・パラワン島の生産拠点であるコーラルベイ・ニッケル社(CBNC)で、HPAL技術※を用いたニッケル中間物の商業生産に世界で初めて成功しました。これにより、限りあるニッケル資源の有効活用と、コスト競争力のあるニッケル原料の安定供給を実現。2013年にはタガニートHPALニッケル社(THPAL)が同国ミンダナオ島で、第2のHPALプラントの生産を開始し、さらなる事業の拡大を進めています。

    ※低品位酸化鉱からニッケルを回収する製錬技術。高温高圧状態で低品位酸化鉱と硫酸を安定的に反応させることにより、ニッケルの合有率を高めた中間原料を生産します。