藤本 宰平
技術本部評価技術部市川評価技術室
2015年入社 総合理工学府物質理工学専攻
解明
原子の世界で
「理」を明らかにする。
その仕事の価値は、
星の未来にまで届く。
電池材料の
開発を通じて、
地球環境に貢献する。
何気なく暮らしている今も、世界のどこかで森林が破壊されている。気候変動が加速している。少年時代に観た、とある報道番組が、藤本の進むべき道を決めた。
「自らの仕事で、地球環境に貢献したい。その想いが、私の将来を決めました。電池材料の開発を通じてなら、それができる。住友金属鉱山を選んだことは、ある意味で必然であったと思います。工場見学を通じて、人に魅力を感じたこと。そして、材料という最上流工程に関わることで、多くのメーカーの仕事にも影響を与えられることが決め手になりました。」
藤本が所属する市川評価技術室は、住友金属鉱山の材料事業を支える重要な部門だ。そのミッションは、さまざまな最先端機器を駆使した分析・評価で、機能性材料の「理」を見出すこと。その知見は、研究開発部門や製造部門にフィードバックされ、品質の向上に大きく寄与していくことになる。
「私たちは、材料事業部門を支える縁の下の力持ち。実際にものづくりをしているわけではありませんが、『正しくものづくりができているか』を評価し、機能性材料の『理』を明確にすることで、研究開発部門の仮説検証や、製品づくりの指針に貢献しているんです。」
仮説を確かめる。
それだけで、
評価の仕事は終わらない。
現在は、透過電子顕微鏡を用いた評価・検証を担当している。この顕微鏡は、原子レベルで物質を観察できる最先端のもの。肉眼では見えない世界で、電池材料や近赤外線吸収材料、磁石材料などさまざまな材料を分析し、評価依頼者からの仮説を検証し、材料のメカニズム解明につながるデータを導き出していくわけだ。
「たとえば、AとBという電池材料のサンプルで、寿命が大きく違っていたとします。私たち評価技術者は、評価依頼者からの『○○だから、違いが出たのではないか』という仮説を基に、それを確かめ、解き明かしていくわけです。」
新たな機能性材料のメカニズムを分析する。製品の品質を検証する。他社製品に特許侵害がないかを確かめる。依頼者からのオーダーはきわめて多様だ。そして、評価技術者たちはそれぞれが担当する評価を総合して、そこに「解」を示していくことになる。
「常に心がけているのは、言われたことを確かめるだけの仕事では終わらせないこと。依頼者からの仮説が正しいのか。そうでなければ、どのような原因が考えられるのか。それらをチーム全体で解き明かしていきます。物質が均等に配列されているか、物質を覆う膜がどのような状況になっているか。ミクロの世界でそれらを検証していくことは容易ではありませんし、まだまだ知識も経験も足りませんが、頼りになる先輩方に支えていただきながら、自分にできることを全うしていきたいと思っているんです。」
材料事業の
発展を通じて、
持続可能な社会を。
市川評価技術室に異動してきて1年。藤本は右も左もわからない中で、高難易度の分析と向き合ってきた。そうした日々の中で感じたのは、住友金属鉱山が持つ「人を育てる風土」のありがたみだったという。
「市川評価技術室の上司や先輩たちは、分析機器の知識はもちろん、さまざまな材料にも精通しています。ここに来るまでは、見たことも、触ったこともなかった透過電子顕微鏡ですが、皆さんのおかげで、少しずつ対応できるようになってきました。その背中を追い続けることで、確かな技術を身につけたいと思っているんです。」
評価技術者には、高度な知見とスキルが要求される。それらは一朝一夕で身につくものではない。多くの先駆者に支えられながら、試行錯誤を繰り返しながら、藤本は着実に次のステージへと登り続けている。
「依頼者の期待に応える仕事ができた時は、確かなやりがいを感じることができます。自らの成長を実感することもできていますし、製品品質や売上に寄与できていることは何よりの喜びです。そして、その価値は社会を支え、地球環境への貢献につながっていくことになります。今後の目標は、評価を通じて、新規の電池材料の開発に携わり、電池材料事業の発展に寄与することです。私たちの材料は、世界が持続可能な成長をしていくうえで欠かせないものばかり。自らが望んでいた仕事ができているのですから、これほど幸せなことはありませんよ。」
ある1日のスケジュール
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8:20出社。メールチェック。
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8:40実験室の掃除後、上司とスケジュール確認。
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9:00透過電子顕微鏡の立ち上げ。
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9:30分析開始。
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12:00昼休み。自分の机で仮眠。
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13:00上司に進捗を報告後、午前に引き続き分析。
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17:00透過電子顕微鏡の立ち下げ。
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17:15退勤。
休日の過ごし方
休日は、子どもと一緒に過ごすことがほとんどです。我が子の最近のブームはお絵かきと教育番組。クレヨンを使って、思うままに絵を描く姿や、歌のお兄さんと一緒になって踊っている姿を見ると、たまらなく愛おしい気持ちになってしまいます。